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民医連新聞

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相談室日誌 連載356 抗がん剤治療を安心して受けるには 松島愛子(埼玉)

 「一週間分の薬だけで一万八〇〇〇円。検査もあり一年間で負担は約八〇万円。入院で貯金を使ってしまったが、職場復帰できるかは分からないので不安」と、外来を受診した、Aさん(六〇代)が医療費の相談で来られました。
 郵便局の契約社員として働くAさんは、妻と離婚して一人暮らし。この会話の約二カ月前に大腸がんが見つかり手術、補助化学療法として一年間の抗がん剤の 内服治療を始めました。四週間分の薬代が約七万円、一週休んでまた四週間内服を繰り返します。一人息子には家庭があり、子どもも小さく、父の経済支援は困 難です。入院時は高額療養費の限度額適用認定証を使いましたが、生命保険の加入はなく、その後の生活費は定期預金を崩してあてる状況でした。
 幸い協会けんぽに加入されており、休職一カ月間あたり約一〇万円の傷病手当金が出ると説明。診断当初の月は高額療養費の医療機関合算で五万円が戻ること も分かりました。少し安心したAさんは「早く体力を取り戻して仕事に戻らないと」と言いながら、手続きしました。
 抗がん剤治療開始から四カ月経ち、Aさんは復職しました。しかし手取りは約三万円減り、七万円の薬代や検査代の負担が重くなります。高額療養費のひと月 の自己負担限度八万一〇〇円にもわずかに届かない負担額で、四カ月目以降は限度額が四万四四〇〇円に下がる「多数該当」にもなりません。一部自己負担金の 減免について相談したところ、収入が生活扶助基準の一・三倍を超えるため、収入の半分が医療費に消えていても対象外とのことでした。
 無料低額診療を行う医療機関は少ないうえ、抗がん剤を出す院外薬局では無低事業ができません。がんの手術が成功しても、その後の負担を考えると簡単に喜べません。
 開発される新薬への期待は高まります。しかし、一方で、費用のために薬を諦めざるを得なかったり、多くを犠牲にしながら生活している方も少なくありませ ん。がんの罹患率が高まる中、民間の生命保険頼みではなく、社会保障制度の一環として、がんとたたかう患者の生活保障を整備する必要性を痛感しています。

(民医連新聞 第1532号 2012年9月17日)