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民医連新聞

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第11回共同組織活動交流集会in岩手 分科会の報告から 福島 はなネット友の会 雨ニモマケズ、風ニモマケズ 震災ニマケナイ、原発ノナイまちづくり語った

 第 一一回共同組織活動交流集会が九月二~三日、「いま、いのち輝く新しい福祉の国づくり」をテーマに岩手県花巻温泉で行われ、約一八〇〇人が参加しました。 昨年九月の開催予定でしたが、東日本大震災の影響で一年延期に。前回の長崎集会から三年、目標を大きく上回る参加者が被災地に集まり、震災後一年半のとり くみを交流。住民本位の復興からはほど遠い被災地の現状と、「せめぎ合い」の情勢の中での共同組織の役割を確認、今こそ共同組織を強く大きくしようと決意 を固めました。集会二日目の分科会から、福島・はなネット友の会の報告を紹介します。(新井健治記者)

桃農家の誇り奪った原発

 はなネット友の会は、介護老人保健施設「はなひらの」をはじめ、福島市内で介護施設と保育園を運営するわたり福祉会の共同組織。福島は桃や梨の産地として有名ですが、放射能は豊かな大地を汚しました。多くの仲間が原発事故の被害に遭い、今も不安の中で暮らしています。
 友の会幹事の斉藤章衛さん (六一 写真)は、福島県北端の桑折町で一五代続く農家。八月は桃の収穫期で、朝の四時から畑に出ます。「苦労を重ね、ようやく山梨や岡山に負けないブラ ンドを築いたとたんの原発事故。丹精込めて育てた桃が無一文になり、どん底に突き落とされた」。淡々とした語り口の中にも、悔しさがにじみ出ます。
 桑折町の主力品種「あかつき」は、甘味と酸味のバランスが絶妙で皇室への献上桃に選ばれてきました。今年も基準値を下回ったことから献上されましたが、 価格は通常の六割ほど。「仲間の農家は疲れきっている。あきらめて、畑を放置する人も」と言います。
 斉藤さんは負けていません。放射能対策として、昨年一二月から木の幹のセシウムを洗い流し、水田には放射性セシウムを吸着するというゼオライトを入れま した。「寒い冬に水をかけられ、木にもストレスがかかった。今年の実はほんの少しですが、甘さの中に渋みがある。桃も原発事故に抗議しているんですよ」。
 八八歳の母を介護しながら、水田一ヘクタール、桃畑六〇アール、野菜畑四〇アールを耕しています。「お客さんに安心して食べてもらい、『おいしかった よ』と声をかけてもらうことが農家の誇り。今は安心してください、と胸を張って言えない。原発は私たちの誇りを奪った」。
 線量計を首から提げ、農作業中も手放しません。「いつまで経っても、線量が下がらない。農業と原発は絶対に共存できない。力を合わせ、安全な大地を取り戻しましょう。皆さん、力を貸してください」と訴えました。

知恵を絞り食育を推進

 わたり福祉会の「さくらみなみ保育園」は、周囲を水田と畑に囲まれています。園児は震災 前、田植えと稲刈りを体験。ジャガイモやトマトの栽培、イナゴの佃煮づくりなど、土に親しみ、自然の中で成長してきましたが、原発事故で一変。今は時間制 限で除染した園庭に出たり、バスで線量の低い地域に行って遊んでいます。
 震災前は「さあ、ご飯だからお部屋に戻ろう」と言っても、「もっと遊びたい」となかなか園庭を離れなかった子どもたち。今は全員が素直に部屋に戻りま す。主任保育士の安彦(あびこ)孝さんは「大人の会話から、放射能の怖さを感じている」と話します。
 同園は「食はいのち」をモットーに、食育を推進してきました。今までとは違う環境の中でも保育士は知恵を絞り、県外産の野菜などの調理を体験したり、プ ランターで野菜を栽培するなど(写真)、子どもたちが食材や自然に親しめるよう工夫しています。
 福島には全国の事業所や共同組織から新鮮な野菜や特産品が届いています。安彦さんは「『みんなが応援しているよ』と園児に伝えています。困った人を助けることができる、そんな大人に成長してくれるはずです」。

友の会で放射能対策

 はなネット友の会の会員は一三四〇人。地域は原発から五〇~八〇km離れていますが、ホッ トスポットと呼ばれる福島市渡利地区も含まれています。友の会で線量計を購入し、いち早く貸し出しを行い、汚染地図を作って少しでも不安を取り除こうとと りくみを続けてきました。昨年一〇月には布引高原(郡山市)の三三基の風力発電を見学、自然エネルギーを学びました。
 はなひらの職員の丹治梨佳さんは「とりわけ作物を育てる人、子どもを育てる人にとって、福島は依然、厳しい状況に置かれています。折れそうになる心をさ さえてくれるのは全国の皆さん。福島に住んでいるからこそ言えること、辛いこと、『脱原発』を、これからも訴えていきたい」と話します。

(民医連新聞 第1532号 2012年9月17日)