「財源が厳しいから」と、負担増をあきらめる前に読むハナシ (2)税にまつわる政府のウソ―
財政問題に詳しい税理士・富山泰一さんが国家財政や「負担の公平」について語ります。連載二回目は、税にまつわる政府のウソについて。
消費税率が高ければ社会保障は充実する?
消費税率アップが議論される時によく出てくるのが「消費税率が高い国の社会保障は充実している」という話です。しかし、実は「社会保障に消費税をたくさん投入しているから、充実している」のではなく、消費税以外の財源が大半です。
なぜなら、消費税率が低い国でも高い国でも、消費税(欧州では付加価値税)が社会保障財源に投入されている割合は低いからです。図1は社会保障財源の国際比較です。社会保障財源に占める付加価値税の割合は、消費税率五%の日本が八・六%で、税率二〇%のイギリスの一〇・九%と大差ありません。ドイツの場合も税率一九%で一〇・八%。社会保障は消費税で賄われてはいないのです。
なお、日本以外の多くの国が、消費税の逆進性から低所得者や年金生活者ら社会的弱者を守るため、食料品など生活必需品を対象に税率を減免する措置をとっていることも紹介しておきます。
日本の法人税率は高すぎるのか?
もうひとつ、よく聞くのが「日本は法人税率が高い」ということ。これもまた根拠のないウソです。
日本の大企業の実際の法人税負担率は、財界の主張よりはるかに低く、資料に基づいて試算をすると、課税のほとんどが大幅に下がります。これは、研究開発減税や租税特別措置などさまざまな控除の結果です。
国際比較をするなら、税率とともに課税ベース(減税で課税所得減)も考慮すべきで、税率だけをとりあげて比較するのは間違いです。図2は主な大企業の実際の法人税負担率を示したもの。ソニーが一二・九%、住友化学が一六・六%など、法人実効税率である四〇%をはるかに下回る負担です。
日本経団連の役員(阿部泰久経済基盤本部長)も、「表面税率は高いけれど、いろいろな政策減免や減価償却から考えるとそんなに高くはない」と明言してい ます。OECD加盟国の税収の国内総生産(GDP)比をみると、日本は三三カ国中、最下位です。
「法人税率を下げないと、企業の海外移転がすすむ」という政府や財界の主張も事実ではありません。経済産業省が海外に進出した企業に対して行った調査で は、七割以上が「現地の製品需要が旺盛」をその理由に挙げ、「税制、融資など優遇措置がある」との回答は八%にすぎませんでした。
(民医連新聞 第1530号 2012年8月20日)
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