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民医連新聞

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橋下市長の大阪で起きていること 暮らしと人間性を破壊

 大阪市の橋下徹市長の動向が、注目されています。メディアが伝えるのはパフォーマンスばかりで、実際の政策はなかなか見えてきません。大阪で今、何が起きているのかー。(新井健治記者)

 「市職員の間に、自由にものを言えない雰囲気が広がっている」と、大阪市役所のあるベテラ ン職員は語ります。橋下市長は今年二月、アンケートと称した職員の思想調査を職務命令と処分で脅して実施。組合活動への参加や政治へのかかわりなど、労働 組合を攻撃しつつ職場の分断を図りました。信念を貫き記入を最後まで拒否した職員、「職は失えない」と泣きながら応じた職員も。
 橋下市長はさらに七月市議会に「職員の政治的行為の制限に関する条例案」を提出、大阪弁護士会をはじめ各種団体の反対を無視して強行採決しました。条例 は政治的目的を有するあらゆる表現活動を禁止し、違反した職員は免職を含む懲戒処分にできます。表現活動は集会やデモにとどまらず、文書、図画、音楽、さ らには演劇、服装まで。目的は市長の方針に逆らわない職員づくり。市民生活を破壊する酷い政策にも何も言えません。大阪市役所労働組合の役員は「条例の狙 いは職員と市民の分断」と指摘します。
 橋下市長の手法は市庁舎の外にも波及。組合の勧誘を調査した運送会社や、組合掲示板を撤去したバス会社も。全大阪労働組合総連合の菅義人事務局次長は 「条例は憲法無視の暴挙。大阪維新の会は国政進出を狙っており、独裁政治が全国に広がりかねない」と指摘。「市職員と民間労働者が連帯してたたかう」と話 します。

人権侵害が全国へ波及

 弱者切り捨ては医療にも。市は五月、西成区で生活保護受給者の「医療機関登録制」を打ちだ しました。受診先を一診療科当たり一カ所に限定、生保の患者は医療機関の選択ができません。市民団体や弁護士、医師の反対で「登録」を「確認」に言い換え たものの、本質は変えていません。
 大阪府保険医協会の渡辺征二事務局次長は、市内の医師から「患者が怯えている」と聞きました。「生活保護バッシングで後ろめたい思いをしている患者さん が、医療機関にかかりにくくなっている。西成区で開業する医師もいなくなり、地域医療の崩壊につながりかねません」と指摘します。
 生活保護関連予算も大幅に削減。一方で今年度から市内二四区すべての窓口に警察官OBを配置しました。七月九日には生保受給者の家族関係など扶養義務者の徹底調査を職員に指示しました。
 全大阪生活と健康を守る会連合会の大口耕吉郎事務局長は「生保利用者や親族への人権侵害が多発する。大阪で成功すれば、全国へ波及する」と指摘します。

広範な市民の反撃

 橋下市長の暴走を許さない幅広い市民の抗議行動も始まっています。市内二一の民主団体で組 織する「大阪市対策連絡会議」事務局長で、大阪民医連常任理事の後みつるさんは、「連絡会議とさまざまな団体が協力して対市交渉や街頭宣伝、集会を開いて います。今は橋下市長を支持する人でも、おかしいと気付いてほしい」と言います。民医連にも、橋下市長の実態を知らない職員がいます。「“閉塞感を打開し てくれる”と漠然とした期待がある」と後さん。
 市政の具体的内容が明らかになるにつれ、橋下市長の支持率も下がっています。橋下市長が六月に発表した「市政改革プラン」は、暮らしに直結する予算を三 九九億円も削減。医療、健康、福祉、国保、保育、教育、地域活動、文化などあらゆる分野に及び、市民病院の統廃合も検討されています()。
 橋下市長のやろうとしていることは、自治体機能の解体による財界のための財源づくりと市民の声の封じ込め。これは、今の政府がやりたいことの先取りで す。大阪市労組の役員は強調します。「これは大阪だけの問題じゃない。みんなのたたかいや」。

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(民医連新聞 第1529号 2012年8月6日)