第一回評議員会のポイントは? 全日本民医連 長瀬文雄事務局長に聞く 動き始めた国民 「架け橋」として先頭に立とう
全日本民医連理事会は第一回評議員会議案を発表しました。総会後初の評議員会の目的は(1)半年間の活動を振り返り、教訓をまとめる(2)情勢の特徴をつかみ第二回評議員会までの重点課題を確認する、の二点です。長瀬文雄事務局長にポイントを聞きました。
民意と国政の異様なねじれ
二月の総会以降、劇的に情勢が変化しました。原発再稼働に反対する毎週金曜日の官邸前抗議 行動には、“普通の市民”が一〇万人単位で押しかけ、これに呼応する「金曜集会」が全国各地で始まりました。七月一六日の脱原発集会は一七万人が集結。海 外メディアは「勤勉で従順な国民が動き始めた」と報じました。国民は今、立ち上がりつつある、と実感します。
背景に民意と国政の異様な“ねじれ”があります。原発再稼働、消費税増税、オスプレイ配備、TPP、どれをとっても国民の六~七割が反対しています。か つての自民党政権なら、もう少し世論を気にしました。これほど暴走する内閣は初めてで、日米安保や財界いいなりの政治の矛盾が限界に近づいています。
多様な市民やJA、医師会との共同など、民医連職員は全国各地で、総会で提起した「架け橋」の役割を担ってきました。脱原発や増税反対など各種運動の根 底にあるのは「いのちを守る」という願い。全日本民医連は「『いのち』を守る共同行動推進本部」を立ち上げました。一致するテーマの運動で人と人の架け橋 になるとともに、いのちをキーワードにそれぞれの運動をつなぎ、より大きなうねりを巻き起こします。
人が育つ本道へ
政府は「社会保障制度改革推進法案」を今国会に提出しました。この法案は社会保障の理念そのものを否定するものです。生活保護バッシングをはじめ、自己責任論が強まる今こそ、人権意識を高めることが求められています。
民医連の強みは、医療・介護を通じ現場の困難に敏感であることです。しかし、脱原発集会の扱いに象徴されるように、大手マスコミの報道は財界寄り。意識 して真実を見る“眼”を養わない限り、民医連職員といえども容易に流されてしまいます。「たたかい」と「学習」をセットに、「人が育つ」本道を歩みましょ う。
東日本大震災の被災者支援では、仮設住宅に共同組織の支部ができたり、仮設の自治会と協力して健康相談会を開く事業所もあります。阪神大震災の経験か ら、震災後二年目以降に仮設で孤独死が増える傾向にあることが分かっています。引き続き、支援を強めましょう。
総会後の半年間、組織内部でも数々の前進がありました。新卒看護師受け入れは九年ぶりに一〇〇〇人の大台に。中小病院を研修から閉め出す「アンダー三〇 〇〇件問題」は民医連の運動もあり、引き続き研修を認めさせることができました。医師の奨学生は新一年生四六人、全体で四一四人と昨年を上回っています。
これまでにない中小病院の戦略を
第二回評議員会までの重点課題は(1)原発ゼロへの政治決断を求め、国民生活をより困難な ものとする悪政を転換する(2)「地域を主戦場」に健康権・生存権を守る運動をすすめる(3)共同組織の役割を重視する(4)中小病院の戦略をつくる (5)「医療・介護再生プラン」のバージョンアップ、の五点です。このうち四点目の中小病院について述べます。
先日、がん研有明病院(東京都江東区)から、「民医連と積極的に連携したい」との申し出がありました。同院は年間約七〇〇〇件のがんを手術します。急性 期を過ぎた患者の多くは退院し別の病院や診療所を受診するわけですが、その中でも特に民医連の評判が良いそうです。
ここに確信を持つとともに、改めて地域における自院の役割を見直すことが不可欠です。中小病院の機能は今後ますます重要になりますが、現状では状況が厳 しい事業所も少なくありません。共同組織とも協力し、これまでの延長線上にはない戦略を持つ必要があります。一一月に初めて、中小病院に絞った交流集会を 開催します。集会に向け中長期の戦略を持ち寄り、他院に学んで飛躍のきっかけをつかみましょう。
(民医連新聞 第1529号 2012年8月6日)