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民医連新聞

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相談室日誌 連載352 「国保が人を殺す」を繰り返させない 北崎美穂子(石川)

 脳梗塞と糖尿病性ケトアシドーシスで、即日入院となったAさん(六〇代・男性)は、息子の車で救急外来に運ばれてきました。保険証は、国民健康保険資格証明書(資格書)でした。
 Aさんは妻と息子の三人暮らし。塗装業を自営していましたが、二〇〇九年頃から仕事が激減し収入が減りました。家計をささえるため、妻が六〇代にして初 めて週五日のパートを始めました。急に一家の大黒柱となり、勤務時間も休日も不規則な妻とは対照的に、Aさんは時間を持て余し、居場所をなくしていきまし た。また、市役所から届いた保険料納付通知を見ずに捨てた、というほど、家族全体が金銭的にも精神的にも、余裕を失っていたようです。
 そんな中、Aさんは体調を崩していきました。当初は市販薬で様子をみていましたが、受診の数日前から食事ができなくなりました。やがてトイレにも行け ず、「このままでは死んでしまう」と思った妻が、受診を決意しました。
 入院後、妻とSWで市役所へ赴き、病状を説明、短期の国保証が発行されました。医療を受ける権利が保障された瞬間でした。
 日々の暮らしが精一杯であるほど、病気になった時の備えは容易ではありません。国保制度は本来、貧しさによって医療を受ける権利が侵害されないよう考えられた制度のはずです。
 私たちは、一九八七年に当院の患者が資格書で受診できず、受診した時には手遅れで死亡するという苦い体験をしています。
 当時は「国保が人を殺すことを繰り返してはならない」と、他団体とともに金沢市と交渉を重ね、資格書発行「0」を勝ち取りました。ところが、二〇〇〇年 の国保法改悪で資格書が大量発行されるように。以降、発行取りやめを求めてきましたが、現在一二〇〇件を超える資格書が発行されています。そして、来年度 から保険料の算定方式を変えようとする動きもあり、ますます目が離せない状況です。
 今後も当事者の声を拾い上げ、受療権を守るために様々な人たちと手を取り合いながら対市交渉や国保119番の電話相談活動など、今まで以上にとりくんでいきたいと思います。

(民医連新聞 第1528号 2012年7月16日)

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