相談室日誌 連載351 介護認定の遅れで考えたこと― 脇村元夫(千葉)
六〇代のAさんは、生活保護を受給中で介護保険サービスを受けながら在宅で独居生活をしています。糖尿病のコントロール不良で起きた壊疽のため左ひざ下から切断、一一年には右足も切断したため、介護サービスなしには在宅生活の継続は困難です。
昨夏、Aさんの介護保険認定期間が満了したため、更新申請を担当ケアマネが代行しました。認定調査や主治医意見書の提出など、手続きは順調にすすみ、八 月中旬には介護認定が決定される見通しでした。ところが九月分の介護保険請求時に、担当ケアマネから介護認定が来ていないとの連絡が。Aさんに関わる各事 業は、請求を保留して支援を続けました。
しかし、一二月になっても認定の知らせは来ません。四カ月も遅れる理由を聞きに、担当ケアマネとともに、福祉事務所に出向きました。
福祉事務所の担当ワーカーの説明では自治体が認定調査を委託した事業所が合併し、それにかかわる手続が最優先されたために、Aさんの認定が後回しになっ ていたことがわかりました。問題を指摘すると、ワーカーはフリーズし、話がすすまなくなりました。結局、その上司を呼び、対応してもらうことに。保険証が 送付されたのは年明けのことでした。
今回は各サービス事業所が柔軟に対応したため、介護なしでは生きていけないAさんに実害が及ぶことなくすみました。しかし、生活保護課で相談業務にあた る職員が制度を知らないという問題を痛感しました。またそもそも、生活保護受給者の介護認定手続きが、保護課を通して行われるしくみにも問題があるのでは ないかと考えます。
一方、今回のケースで私たちケアマネ側も学びました。必要な手続きをしても認定が遅れている場合には、速やかに行政・関係者と協力して原因を追求し、動 くこと。利用者やサービス事業所に問題が波及しないよう動くことも重要な業務です。
もちろん、利用者が気兼ねなく介護サービスを権利として受けられることが前提であることも忘れてはならないと思っています。
(民医連新聞 第1527号 2012年7月2日)