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民医連新聞

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放射能から子ども守れ 首都圏の“ホットスポット”で民医連の医師たちは― 埼玉県 三郷市

  クリニックふれあい早稲田(埼玉県三郷市、東京民医連)の大場敏明院長が、市内の医師や母親らと「三郷の子どもを放射線から守る連絡会」を立ち上げ、調査 活動や行政への提言にとりくんでいます。同市は福島第一原発から二〇〇km離れていますが、首都圏で最も放射線量が高いホットスポット。昨年一二月に環境 省が指定した「汚染状況重点調査地域」の一つです。大場さんは「尿中セシウム検査から、市民の内部被曝は明らか。とりわけ放射線の感受性が高い子どもの健 康を守りたい」と話します。(新井健治記者)

母親たちや市民と

 市民独自の放射線量測定などで、三郷市がホットスポットとして注目され始めたのは昨年五月。大場さんは「診察の現場で、子どもの被曝を心配する母親の気持ちをひしひしと感じた」と振り返ります。
 大場さんは市内の内科医や小児科医に呼びかけ、翌六月に連絡会を発足。みさと健和病院など民医連のほか、保育園園長、父母、労働組合が参加し、民医連以外の小児科医も世話人を務めます。
 連絡会の役目は市民と行政の“橋渡し”。放射線量などのデータや医師の科学的知見を生かして三郷市に提言、行政の放射能対策を後押ししてきました。昨年 八月の最初の懇談では、放射線対策室の設置や放射線量の測定など五つの提言を提出。市側は当初、「ただちに健康に影響はない」との見解でしたが、連絡会の 働きかけ等もあり、九月に県内で初めて「放射能対策室」を設置しました。
 連絡会は昨年一〇月、三~九歳一五人の尿を検査、五人から自然界には存在しないセシウムが検出され、事故で飛散した放射性物質による内部被曝が明らかに なりました。その一五人のうち、食材、外出時の服装、行動制限など放射能対策をした一〇人中、セシウムが検出されたのは一人だったのに対し、未対策の五人 からは四人に検出と明らかに差異が。大場さんは「改めて放射能対策が重要であることが分かった」と指摘します。
 連絡会はその後も三回にわたって市と懇談。除染計画の策定や健診の実施などを要請しました。市は保育園や小中学校など公共施設の除染にとりくみ、今年一 月には市民に線量計一〇台の貸し出しも始めました。市民参加型の測定は連絡会が提言したことです。

私有地の除染を

 八歳と三歳の男の子がいる中山智子さん(29)は原発事故後、いったんは近畿地方に避難し ました。三郷市に戻ってから、インターネットでつながった若い母親同士で市民グループ「SCR(放射能からこどもたちを守ろう)みさと」を立ち上げ、連絡 会と協力して市に対策を求めてきました。
 中山さんはその後も市外に避難すべきか悩みましたが、内部被曝の主原因が食材であるなど情報を集め、「生活を工夫して被曝のリスクを分散しよう」と考え ました。給食の代わりに子どもには弁当を持たせ、水はすべてペットボトルに。米と野菜は四国の農家から取り寄せています。「お金はかかりますが、子どもた ちのためにできる限りのことはしたい」と言います。
 今年三月、連絡会に参加する三郷市労働組合連合会などが市内七七カ所で放射線量を測定。七〇カ所が原発事故から一年たっても、国際放射線防護委員会が定 めた年間被ばく線量の限度(一ミリシーベルト)を超えていました。昨年一〇月の一斉調査と比較しても、あまり線量は下がっていません。大場さんは「公共施 設だけでなく、通学路など私有地の除染を急ぐべき」と指摘します。
 大場さんは反核医師の会の活動や、被爆者医療にもかかわってきました。「放射能の危険性を学んでいたにもかかわらず、結果的に五四基もの原発の建設を許してしまった。福島の原発事故には痛恨の思い」と話します。
 連絡会の提言で、市の放射能対策は一定程度前進してきましたが、内部被曝の影響は長期にわたります。四回目の提言には、住民の尿中セシウム検査、血液検 査、超音波検査などの健康診断を、無料あるいは補助をして行うことも盛り込みました。
 大場さんは「チェルノブイリでも、原発事故後二六年たってから健康被害が出ている。医師として市民の健康を見守り、早期発見、早期治療に努めたい」と話します。

三郷市の放射能対策

2011年6月
保育園、小中学校等の放射線量を測定
8月
新しい放射線測定器を購入し測定開始
9月
「放射能対策室」が発足
  保育園の除染を開始。小学校、中学校、公園と順次行う
  放射能に関する講演会を開催
  放射線量測定を市内56カ所に広げる
2012年1月
市民への線量計貸し出しを開始
3月
保育園、小中学校給食の放射線量測定開始
  希望する農家への放射線量測定開始
6月
家庭菜園の農作物の放射線量測定開始
  三郷市除染実施計画策定

(民医連新聞 第1527号 2012年7月2日)