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民医連新聞

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ここにもできた民医連の“住まい” 長野県塩尻市 高齢者介護福祉施設

 民医連は今期、介護・福祉の課題に、「住まいづくり」をかかげています。民医連の住まいはどこにこだわるのか。五月一日に開設した長野・協立福祉会の高齢者介護福祉施設を取材しました。(矢作史考記者)

 施設は塩尻協立病院の目の前にありました。介護型有料老人ホーム「みずほの里」に、小規模多機能型居宅介護施設「おひさま」とデイサービス「はなみずき」などを併設する複合型です。
 施設づくりは塩尻市から、塩尻協立病院に「小規模多機能型居宅介護施設を作らないか」と声がかかったことがきっかけでした。
 塩尻市の高齢化率は二二・六%で四・五人に一人が高齢者という状況(〇八年一〇月現在)。しかし県から特養や老健の設置許可が出ず、施設入所の待機者は 増加の一途でした。そこで協立福祉会が手を挙げ、住の要望に応えるため有料老人ホームの併設を目指しました。

低所得でも入れて質は高く

shinbun_1526_01 法人がこだわったのは低所得でも入れる施設にすることです。
 料金設定は別項の通りです。生活保護でも入れるようにしているのが特徴です。入居時の一時金は二〇万円。家賃は生保基準の三万五〇〇〇円。食費と水光熱 費は定額です。ほかに、おむつ代などの介護用品や生活雑費の自己負担があります。自己負担の多い生保利用者の料金は、施設側が管理費で調節します。
 しかし利用料を抑えた分、施設の経営は厳しくなります。施設長の小沢恵美子さんは語りました。「開設したばかりのため今後も工夫が必要なんです」と。
 施設は二階建てで、六畳の個室が二九室。また、夫婦でも入居できる八畳の部屋も三室。一階には小規模多機能とデイサービスのスペースがあります。食事は外部委託ですが、栄養バランスが整った温かいご飯が出ます。
 複合型の強みもあります。機械浴の設備もととのえ、小規模多機能施設ながら重度の利用者の入浴ニーズにも応えています。
 また、塩尻協立病院との連携もあり、医療依存度が高い透析患者の受け入れも可能です。松本協立歯科の往診も入ります。

「家」として

 暮らし心地はどうでしょうか?
 開設直後に入居した七〇代のAさん(女性)にお話を聞くと…。ひとり暮らしでしたが低血糖でふらつくことが多く、主治医のすすめで入居しました。「お医 者さんからは、日常的に声を出さないと声が出なくなると言われていたけど、ひとりなので話し相手もいませんでした。でもここ(みずほの里)で友だちもでき たし、ご飯がおいしい」と話します。
 花を育てるのが好きで、「今度はいっしょにテラスにお花を植えよう」と職員と話しています。
 介護士長の田中俊明さんは、入居者が「ここに居て良かった」と思えるような施設づくりを目指している、と話します。「利用料を限界まで抑えると、人件費 の捻出も大変で体制は厳しいです。でも、職員は利用者さんと関わりを大事にするなかで、やりがいを感じ、元気に働いてくれています」。
 加えて「介護が必要な入所待機者が多いのに、行政は特養や老健を増やしません。そんな中こうした有料老人ホームを作ってささえることは民医連の役割の一 つだと思います。また、介護ウエーブなどを通じて、介護職員の権利を向上させたい。施設に新しく入った職員たちともいっしょに」と、決意も語っています。

住まいの確保は基本的人権です

全日本民医連介護福祉部 林泰則理事の話

 全日本民医連は第四〇回総会で「高齢者の居住権保障」を方針に明記しました。
 日本は住まいの公的保障が薄い国です。それは昨年に起きた東日本大震災でも露呈し、津波や原発事故で住まいを失った被災者にさえ保障は十分ではありませ んでした。また、家賃の公的保障がある高齢者優良賃貸住宅の制度も廃止され、低所得者への配慮も欠くものになっています。
 全国の特養待機者は四二万人。こうした実態を背景に、高い家賃の施設や、低価格でも劣悪な環境の未届け施設が存在していることも問題です。
 民医連でこのような事業を実践すると同時に、自治体にも住まいの公的な保障を求めていくことが大事です。居住権保障は住み続ける権利の保障であり、基本的人権です。

(民医連新聞 第1526号 2012年6月18日)