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民医連新聞

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私の3.11 (3)福島 大澤秋恵さん 学ぶことでやっと生きてきた

 私は福島市に住む八歳、五歳、二歳と三人の男の子の母親です。福島の春は桃や梨がいっせいに花を咲かせ、美しい田園風景が広がります。ところが、昨年三月の原発事故で全域が放射能に汚染されました。
 小学校と保育園の野外活動はほとんど中止になりました。四月は窓を閉め切り家の中で過ごしたものの、五月に入ると気温も上がり生活がとても息苦しかった です。窓を開けて室内の放射線量が上がらないことを確認し、ようやく洗濯物を外に干しました。
 草花やザリガニに触らない約束を子どもと交わし、少しなら外遊びも許可しました。帰宅したら、すぐに着替えと手洗い。まだ幼い三男に約束は分からないた め、三男が眠っている間に上の子だけで外出…など、一つの行動に大変な苦労を伴う毎日でした。小学校の登下校も徒歩か車かを各家庭の判断に委ねられ、結果 的に長男の登校班は崩壊しました。
 事故直後から職場や地域の講演会で学び、何とか平常心を保つことができました。「学ぶことによって、やっと生きてきた」と言っても過言ではありません。 それでも「ここに居ることは、我が子を守っていないことになるのでは?」と、この一年間、自分への辛い問いを繰り返しました。しかし、それでは前へすすめ ないのです。色々な意味で覚悟を決めなければ、もう前へはすすめない―。

ショックだった次男の言葉

 あれから一年が経過し春の気配が近づいてきたある日、次男が突然「もう、花なんて踏んづけ るから」と言ってきました。次男は動物や草花が大好き。散歩に行くと道端に咲くタンポポや小さな花を摘んでは、小瓶にさして家に飾っていました。「な ぜ?」と聞き返すと「とったらダメって言うんでしょ」と。ショックでした。
 私たち夫婦は毎日のように原発や放射能のことを話題にしています。大人の会話を聞き、子どもは大人以上に不安やストレスを感じています。外で自由に遊べ ない、草花や虫を手に取って触ることもできない状況が長期間に及び、がまんも限界になっていることを痛感しました。そして、このまま制約を続けることは、 子どもたちに与える影響があまりに大きいと考えるようになったのです。
 福島市内の除染がすすまない中、放射能に関する学習と情報収集、食品の選択、一時避難など、さまざまなことに追われ、あっという間に一年が経ちました。 まだまだ問題は山積みですが、今年の春は花見をしたり、長男の登校班も一部再開したりと、少しずつ元気を取り戻そうとしています。
 最後に、全国の皆様からの暖かいご支援、本当にありがとうございます。いつも心を救われています。ここにいる人々と、そして全国の多くの人々と手をつな ぎ、今を歩き続けていきたいです。原発のない社会をめざして。

思いを数編の詩にしました。そのうちの一つを紹介します。
(医療生協わたり病院、薬剤師)
■募集■この連載に出て下さる方を募集。自薦、他薦は問いません。
min-shinbun@min-iren.gr.jp

「花のサイン」

たんぽぽを見つけては
手のひらいっぱいに摘んでいたあなた
野花を持ち帰っては
お家のコップに飾っていたあなた
大好きなあなたへ

もう花なんか踏んじゃうから

春の気配を感じたあの日の夜
吐き捨てるようにあなたは言った

背中を壁にぴたりとくっつけ
唇をかみ じっと斜めに床を見つめている
あなたが嫌がってどんなにもがいても
あなたをただ強く抱きしめた

とったらダメって言うんでしょ!

ふりしぼるように小さな声で
あなたが今にも壊れちゃいそうだってこと
教えてくれて良かった

(民医連新聞 第1524号 2012年5月21日)