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民医連新聞

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全日本民医連 QI推進事業 開始1年で報告会 医療の質の「見える化」で改善・向上を図る

 二〇一一年一月から、「総合的な医療の質の向上」(第三九回総会運動方針)の具体化としてスタートした全日本民医連の「QI推進 事業」(別項)。四半期ごとに指標を収集し、三月三一日、開始から一年の結果をまとめた初めての「QI推進事業二〇一一報告会」を開催しました。(丸山聡 子記者)

 全日本民医連の羽田範彦事務局次長が、「短期間だが、前向きの変化が出ている。現場が発信源。それぞれの課題を見出してほしい」と開会あいさつしました。
 聖路加国際病院・医療情報センター長代理の嶋田元(げん)さんが「医療の質を測り時系列で改善する―聖路加国際病院の先端的試み」と題して講演。同院では、二〇〇五年にワーキンググループを立ち上げ、〇六年からその内容を公表しています。
 嶋田さんは、「現場の意向を尊重」「多くの職種が関わる指標」「臨床スタッフに新たな負担・仕事が発生しない指標」などの方針で決定された同院の指標から、具体的な改善過程を紹介しました。
 たとえば、急性心筋梗塞患者への退院時β遮断薬の処方は〇七年は二五%にとどまっていました。背景に、「日本人には副作用が多いのでは」と考える医師が 多いことがわかりました。そこで実際はどうか検討し、β遮断薬を処方した場合、再発が三分の一に減ると医師集団で確認。その結果、翌年には七六・三%に増 加しました。
 入院中の転倒・転落については、「転倒・転落研究会」を発足し、対策案の発案・実施に乗り出しました。転倒が多かった病室内のトイレ周辺には、院長判断 で予算をつけ、手すりを設置し、段差を解消。従来のリスクアセスメントツール一三項目を七項目へ絞り込み、それをもとに患者・家族へ説明しました。その結 果、入院患者の転倒・転落発生率は二・一三‰(〇四年)から一・五三‰(一〇年)に減少しました。
 同院に寄せられる投書のうち、感謝の内容は全職場に配布して共有し、苦情は対応する部署のみに配っています。全職員のQI活動への参加意欲を高める方策 として、「ポジティブ・フィードバックがひとつのカギ。良くなる可能性を示し、改善したことがわかる指標として返すようにしている」と紹介しました。
 嶋田さんは、「医療の質の向上・改善には組織としてのアプローチこそ大事で、それを確立することで全体として質が向上するのではないか」と語りました。

1年の活動振り返る

 続いて五十嵐修・全日本民医連QI委員長が二〇一一年のQI事業について、項目ごとに全体の傾向や指標から読み取れる内容、それぞれの病院がどういう位置にあるのかなど、複数の図表を示しながら解説しました。
 「入院患者の転倒・転落発生率」「治療を必要とする転倒・転落発生率」では、転倒・転落発生率が高くても治療が必要な割合は低い病院や、反対に転倒・転 落発生率は低い病院でも治療が必要な割合は高いケースも。「前者では、ささいな転倒も見逃さない姿勢が徹底し、治療が必要なほどの転倒・転落が少ないのか もしれない。後者では、ささいな治療も厳密にカウントしているとも考えられる」と説明。どの指標でも、単純に数値だけでは判断できないこと、病院の規模や 性格などが自院と近い病院と比較するなど、それぞれの利点や改善点を検討してほしいと強調しました。二〇一二年は、民医連加盟病院のうち約半数の七〇病院 が参加します。
 外部委員の猪飼宏氏(京都大学大学院医学研究科助教)、新保卓郎氏(国立国際医療研究センター医療情報解析研究部部長)が講評。二病院、一県連が指定報 告をしました。報告会には医師二五人を含む約一二〇人が参加しました。


QI推進事業とは?

 全日本民医連「医療の質の向上・公開推進事業」のことで、QIとはQuality  IndicatorおよびImprovementの意味。設定した医療指標に基づいて医療活動を集計・評価・公開し、質の改善・向上を図る。医療活動の 「見える化」であり、「医療活動と医師養成の基盤」ともなる。
 全日本民医連は外部委員を含む委員会を設置し、二〇一一年は六〇病院が参加した。厚労省「平成二三年度医療の質の評価・公開等推進事業」に採択され、三八病院が参加し、一七の指標を公表している。

(民医連新聞 第1522号 2012年4月16日)