たばこと禁煙基礎知識 医療・介護で働く人へ これくらいは知っておこう!(1) はじめに 広瀬俊雄医師(仙台錦町診療所 産業医学センター) By宮城民医連 禁煙ネット
新連載は「たばこ」です。モシモシ、1行目で視線をそらそうとした方よ、この連載は「吸っていようが吸ってなかろうが医療・福祉の従事者なら知っておこう!」という最低限の情報を、お伝えするものです。まずは指南役・広瀬俊雄医師から。
2011年10月17日号の本紙に、「たばこ税増税に賛成? 反対?」という紙上討論が企 画されていました。紙面を読んで私は、強い違和感を覚えました。主題が「復興財源にタバコ税をあてて良いのか?」であっても、172カ国が批准している 「WHOたばこ規制枠組み条約」が紹介されていませんし、紙面に、「税」とは直接関係の無い書籍『禁煙ファシズムと戦う』も堂々と掲載されていました。
「これは医療・福祉の専門家の団体の機関紙としてどうなのか?」と、編集部にご意見申し上げたことがきっかけで、この連載の相談が入りました。宮城民医 連の「禁煙ネット」を形成している各病院・診療所禁煙外来の担当者が交代で執筆することにしました。
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最近、我が国の喫煙者は減ってきています。公共施設を中心に「全施設内禁煙」も広がってきてはいますが、まだまだ不十分なのが実態です。「禁煙反対」の 声も根強く存在しています。例えば、『週刊文春』の対談で話し手が「煙草吸わない男がいるってのが信じられないね。何のために生まれてきたのか」と発言す る。また、子どもたちが大好きなアニメ作家は、東日本大震災の被災地に「手に入れにくいだろう」と、たばこを送り続けてきたエピソードも有名です。
禁煙しない人たち、禁煙を広げたくない人たちの「論理」を概括すると、「喫煙・受動喫煙の有害性は不確かだ」「有害は確かであるが益もあるだろう」「有害で結構! 太く・短くでけっこう!」「そもそも個人の嗜好を国家などが規制することはまかりならぬ」などです。
しかし喫煙は、特に子どもや老人、病人など主に弱者に被害を及ぼします。連載では、その辺を解き明かします。
なお、先述の紙上討論で取り上げられていた「タバコ税」に関していえば、枠組み条約第6条で「たばこ需要を減らす為 価格と税を上げる」と明記していま す。条約全体での日本の達成率は11.7点で、2010年には日本に向けた「勧告」が全批准国満場一致で採択されました。シリーズ2回目で、この「たばこ 規制枠組み条約」を取り上げます。
第3回で「たばこそのものの有害性」、第4回で「たばこによって生まれる健康障害や疾病悪化」、第5回「受動喫煙の有害性」、第6回「禁煙外来の内容と 禁煙の効果」の予定です。連載中、読者の皆さんからのご質問や、新たな展開がありましたら、最後に私が再度、書いて締めたいと思います。
(民医連新聞 第1521号 2012年4月2日)