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民医連新聞

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新綱領で大きく広がった運動 理事会報告 総会3日目

 二日間の討議で、代議員から発言のあった議案に対する意見や質問について、理事会の現時点の見解を長瀬文雄事務局長が報告しました。

DVDやパンフで普及

 討議全体を見ると、内容の補強や部分的な修正意見はありましたが、全体として提起した方向について反対はなく、深める発言が圧倒的だったと受け止めています。
 討議を通じて、新しい綱領のもとでこの二年間、さまざまな分野での活動が大きく広がっている、そのことを皆で共有できたと思います。全日本民医連理事会 は、補強提案やより正確な表現への修正意見、数字や字句上の修正について、新理事会で可能な限り取り入れ、方針決定に反映します。「議案は代議員の総意で 決定する」との立場で臨みます。
 新理事会は決定した方針が、全職員や共同組織の仲間に普及するよう尽力します。全日本民医連として総会DVDを作成します。さらに理念的な問題や普及す べき点については、『民医連医療』や『民医連新聞』で周知を図ります。「健康権についてはパンフレットをつくって普及してほしい」との要望もあります。積 極的に応えていく予定です。

「福祉国家」と「福祉社会」

 討議の中で出された発言のうち、重要だと思われる以下の三点について、理事会の見解を述べます。
 一つ目は総会スローガンの「福祉国家」の表現について、「福祉社会」との表現にとどめておくべきではないか、との意見です。
 全日本民医連はスローガン第一項で、「住民本位の震災復興、平和と権利としての社会保障を実現する新しい福祉国家への展望を創りだそう」と提起しました。
 討議や記念講演でも明らかになったように、政府は憲法の理念を否定し、社会保障と税の一体改革を通じて、この国のあり方そのものを変えようとしています。
 国民の期待、実態と全く逆方向にすすむ政権に対し、その対抗軸として国のあり方を問い直して展望を切り開くために、憲法が輝く国づくりの方向で福祉国家を打ち出しています。内容については、総会で論点を提示しました。今後、さらに探究します。

生存権と健康権を統一的に

 二つ目は、健康権に対する考え方です。総会議案書一二ページの下から三段目に「憲法二五条の生存権を現代的に深化・発展させるたたかいと実践の機軸とし て位置づけられます」との記述があります。この記述に対し「もっと生存権を重視すべきではないか」との意見があるなど、やや誤解を招く表現になっていると 思います。
 昨日、「生活保護の老齢加算廃止は違憲」とする福岡高裁の判決に対して、最高裁で口頭弁論がありました。これは老齢加算廃止を合憲とする判決を出そうとする逆流の動きです。
 全日本民医連ソーシャルワーカー委員会の調査は、老齢加算の廃止によって多くの人が食事を一日二食にしたり、親戚づき合いを断つなど、厳しい生活状況を明らかにしています。また、ここ数日だけで、札幌、埼玉、立川で孤立死事件が相次ぎました。
 こうした生きるか死ぬかという瀬戸際で、民医連として生存権を守ることを強調すべきとの意見です。全くその通りです。生存権が脅かされている状況に対し、私たちは人権の感度を高め全力でとりくむ、そのことを改めて確認したいと思います。
 一方、健康を阻害する要因を考えた場合、被災地の仮設住宅では劣悪な住環境が健康を阻害しています。また、福島をはじめ放射能被害で安心して食べることができない実態があります。交通手段がないために、医療機関にアクセスできない現実もあります。
 「健康権か生存権か」と二者択一で捉えるのではなく、生存権を徹底的に守り抜くとともに、すべての人々が最高水準の健康を享受する権利を守ること、このことを統一的に捉え、とりくみを強化しようというのが趣旨です。
 誤解のないように議案書を修正するとともに、人権、健康権、生存権の問題をさらに探究し、より具体的な実践課題とします。

規約改定を巡るいくつかの意見

 三つ目は、「今回の総会で規約を改定すべきではない」との意見です。全日本民医連は二〇〇 四年の第三六回総会で、規約改定と綱領改定を同時に提案。前総会で新しい綱領が決定しました。新綱領が大きな力になったことは、今総会の発言でも裏付けら れています。規約と綱領は表裏一体の関係にあると考えます。
 理事会は昨年八月の第三回評議員会で、規約改定案を提案しました。同時に総会までの半年間、全国討議に付すとともに、途中で意見集約をしよう、必要なら ば修正もしようということで、昨年一一月、県連事務局長会議を開きました。今回はこの間の議論を踏まえ、一部修正のうえ新たな提案を行っています。
 改定の目的は、綱領と規約の間に整合性をもたせることにあります。提案では、前文削除とそれ以外については必要最小限の改定に留めています。討議の中で 「事業所加盟から法人加盟にしてはどうか」という意見がありました。これは非常に重要な問題ですが、組織のありよう、全体を左右する問題で慎重に扱わなけ ればなりません。
 また、「法人本部が大きくなっており、一つの事業所として扱ってはどうか」との意見も出ています。これも検討すべき課題です。ただ、法人本部の職員が民医連職員としての活動を制約されるとの実態はありません。
 また、民医連加盟事業所に対する統制についても意見がありました。提案に当たり他団体の規約も吟味し検討しましたが、統制事項をもつことは、組織として 当然の整備です。現規約は第一一条第一〇項で「県連は事業所の加盟、脱退の決定にあたってはあらかじめこの会と協議し、会の承認をうる」としています。 「この会」とは、すなわち全日本民医連のことです。
 全事業所が全日本民医連そのものに加盟しているわけです。統制事項もそれに対をなすものとして、組織整備の課題として提案しています。現に県連の要請に 基づいて、個別法人や事業所に対する対策委員会も全日本民医連としてつくっています。
 なお、「運動方針からの逸脱」とは、以前からあった条項で、今回、特別加えたものではありません。また、この統制事項が個別の事案を想定しているもので も、全くありません。運動方針上、意見の相違が生じることはあります。ただ、同じ民医連の仲間として徹底的に議論し、そして実践を通じて検証できる、この ように確信をしています。
 同時に、仮に統制という事態になっても、それは総会で決めることです。このような形で幾重にも民主的な手続きを保障していくことで、理事会としてはこう した事態が発動されることがないように考えています。改めて民医連運動への結集と団結の強化を呼びかけて、現時点での理事会報告とします。

(民医連新聞 第1520号 2012年3月19日)