運動方針深める発言900本 分散会報告 総会3日目
三日目の全体会で、三人の代議員が二日目に行われた分散会の内容を報告しました。分散会は一三カ所で行われ、発言はのべ九〇〇本にのぼりました。
第1分散会
全国支援に感謝
小林幸子代議員(北海道勤医協・看護師)
第一分散会は発言数七五、発言者は五一人でした。特徴の第一は、後継者確保と育成の課題で す。看護、介護、事務、リハビリ、薬剤師、医師の各職種と、青年職員育成で報告がありました。山形では、新卒看護師の四割が県外に就職。看護師不足を地域 の問題とし、医師会、自治体に働きかけ、看護学校の定員増や予算計上を勝ち取りました。
大阪では高校生からのつながりを丁寧にフォローし、新卒確保につなげています。看護補助者育成を自前で行っている秋田から、教育プログラム指針などで全 日本への期待が寄せられました。福岡はリハビリ技士の在宅への視野を事例検討会で広げている、大阪は薬学生とともに薬害裁判の傍聴参加など、民医連らしい 活動を体験しています。
宮城と石川の青年委員会、事務委員会での育成政策の具体化。島根は医師、看護師不足の対策としてTQM(総合的品質管理)の導入と、患者を中心にチームでささえ合う実践を報告。
山梨、沖縄は医師の入職、退職データを基に、政策をもつことの必要性と研修内容が重要と報告。東京から、既卒医師への研修や定着への記述の要請がありました。
利根中央病院は、全国支援で変わったのは医師であり、朝会、各種会議、カンファレンスへの参加、さまざまなアドバイスと実践で病院全体が元気になったと報告しました。
特徴の第二は震災、原発事故をめぐる現地の状況ととりくみです。宮城は全国支援で宮城野の里が福祉施設として認知症、高齢者の受け皿となり、地域に安心 を提供できたことは綱領の実践だった、復興の遅れとメディカル・メガバンク構想をやめさせるたたかいが始まっていると報告。
福島からはいまなお続く放射線被曝の実情と、地域から子どもたちの姿が消えたことが語られ、安心して住める福島を取り戻したいと決意を語りました。
第三は、患者をとりまく情勢と医療活動です。介護について、岡山での対市交渉にむけたとりくみ、群馬は介護老人保健施設のあり方を報告。東京からは介護 ショップ交流会の要望がありました。北海道は介護理念の学習のとりくみと、介護報酬改定の狙いを訴えました。
大分の無料送迎は、全外来患者の二〇%となり、患者の状況がよく分かり、ケアに生かせるなど、大事な活動になっています。新潟からは院内処方で患者負担 軽減を図っている実践、埼玉は地域包括ケア構想に対峙する法人の中長期計画を報告。大阪、兵庫、埼玉、鹿児島はアスベスト問題について発言、全国で発見・ 発掘する構えについても確認しました。水俣病についても、引き続き全国でとりくみを強めようと確認しあいました。
第四は在宅医療、地域医療、チーム医療、医科歯科連携について。長野は徹底した地域連携で在宅医療を展開し、連携先の急性期病院に自院の医師が回診に同行するまで発展していることを報告しました。
同じく長野から、自院のポジショニングを医学対に結びつけた活動の報告。鹿児島は地域の救急医療が崩壊する中で、医師会や行政、消防署に働きかけ、地域での架け橋となっていると報告しました。
香川は六〇人のスタッフがいる回復期リハ病棟の組織改変を行い、カンファレンスを重視したチーム医療の実践と成果について報告。医科歯科連携について、 大分、広島、東京、石川、神奈川、香川、埼玉から報告があり、連携の記述要請と診療報酬の特別な関係の撤廃を求める運動への要望が出されました。
第五は健康権についてです。議案を読み、事例を紹介しながら意見交換、概念の学習をすすめつつ、実践課題であることを確認しました。規約改定について、「正式名称に介護を入れてほしい」と要請がありました。
全体を通して山形、宮城、福島、利根、川崎、徳島の各代議員から、全国支援への感謝と、引き続き奮闘していることが報告され、そのつど拍手で互いの健闘 を確認し合いました。
第5分散会
議案を支持し補強
松原為人代議員(京都民医連中央病院・医師)
第五分散会の発言数は九二、発言者数は四二人でした。
はじめに福島の桑野協立病院が、原発被災者の検診と支援の現状を報告。いまも各地で、継続的な支援活動が展開されていることに感銘を受けました。被災者 支援の議案の記載には、具体的な内容を加えてほしいと要望がありました。
全国各地でとりくまれている被災者の検診に関して、内分泌学会やマスコミの対応など慎重な対応が求められるとの意見があり、「検診基準を全日本民医連で作成してほしい」との要望もありました。
無料低額診療事業で多くの報告がありましたが、自治体の温度差が大きいという印象です。調剤薬局における窓口負担問題は、慎重な対応が必要だとの意見と 同時に、窓口負担減免を求める運動の要望がありました。受療権を守るとりくみは、心を打つものが多く、医療費無料化の重要性を感じました。
介護分野での発言も多くありました。介護に関する組織づくりと介護報酬改定の深刻な影響が語られ、たたかいと対応の重要性が報告されました。
健康権に関し、「憲法にこだわったとりくみが発展に結びつく」との発言がありました。理事会から、健康権に関して世界各国の憲法における扱いの説明があ り、民医連における定義はまだ明確ではなく、実践から見直していくとのことでした。また、健康権を医療活動の基軸に据えることについて、相反した発言もあ りました。
ソリッド・ファクトについて、健康を剥奪する要因として捉えると、健康権がなにを指すのかが理解しやすいとの意見がありました。健康権については捉え方 もさまざま。全日本が学習資料を提示すべき、との意見がありました。
事業所運営に関して、歯科診療所の経営改善の報告、経験の交流がありました。チーム医療では、日常業務の運営にもその視点をもって臨むべき、との発言がありました。
薬剤師養成で病院薬局と調剤薬局とのローテート研修について、看護は認定・専門看護師養成政策についての報告がありました。認定・専門看護師養成政策の 経験について、複数の追加発言がありました。また、議案に看護・介護活動研究交流集会の記載がなく、追加してほしいとの要望がありました。
事務職員の養成に関して、事務の役割を明確にすると同時に、日常の医療に携わる多職種間の架け橋となる能力を身につけることが重要だとの意見が複数あ り、興味深いものでした。事務職員養成の表現を、コーディネートからマネジメントと変更してほしいとの要望がありました。
医師養成も、多くの地域から報告がありました。東京では卒前対策としての東大対策、地協を超えた研修センターのとりくみなどを行っています。全日本民医 連医師臨床研修センター(イコリス)について、「全国の事業所のホームページにバナーを貼り、幅広く知らせてほしい」との要望がありました。神戸、鳥取、 京都、秋田が研修医獲得について報告しました。
宮崎からは、研修と日常診療で充分な医療を提供するために病床を削減したこと、医師業務の軽減について自院の現状を近隣の開業医と率直に懇談したとこ ろ、外来や検査の支援を受けられるようになったとの報告がありました。
全体的に議案を支持し、補強する立場の意見でした。規約改定案には反対や修正意見はありませんでしたが、提案趣旨に関して、法人加盟の説明は不要ではないか、との意見がありました。
第8分散会
活発で有意義な議論
名嘉共道代議員(沖縄協同病院・事務)
第八分散会は総会方針に対して六一本、規約改定に対して二本、合計六三本の発言がありました。総会方針案は全体として積極的に受け止められ、賛成や補強する形での発言が多くありました。特徴的な発言四本に絞り報告します。
山梨・甲府共立病院は、医療被曝と安全な医療のとりくみを報告。近年、高度に進化する放射線機器で詳細な画像を提供できる反面、血管カテーテル治療で は、患者への被曝線量の増大から皮膚障害を発症する事例もあります。安全な医療が提供できているのかという疑問から、「医療被曝低減施設」という第三者評 価の認定を受け、安心・安全な放射線診療にとりくんでいます。職員の意識も変わり、患者との相互理解もすすんだとの評価です。民医連の人権を守る医療につ ながると確信も深め、全国で医療被曝低減施設認定取得を呼びかけています。
北海道・伏古ひまわり薬局は、患者負担の増大と高薬価の実態について報告。高薬価による窓口負担の支払い困難事例が増加し、無料低額診療事業利用者でも 薬局では窓口負担が生じるため、未収金が増加しています。ある無低診のリウマチ患者のケースでは、エンブレム皮下注、メトレール錠で治療した結果、症状が 改善され仕事に復帰し収入が増加、無低診の対象外に。そのため、薬代を払えず服薬を中断。薬局にも四六万円の未収が残った事例が報告されました。
高い窓口負担の要因として、窓口負担率の高さ、薬価自体が高額なうえ薬価の決め方にも問題があること、薬価が下がらない仕組みも指摘されました。高薬価 の問題、無低診への薬代の適用などを社会に呼びかけていこうと提起しました。
青森からは医学対について。医学生の民主的成長への援助として、社会保障学校のとりくみを報告しました。二〇一〇年一〇月から学生対象の学習会をスター トし、医学生自らが学習テーマを設定し、レポートを作成、討論しています。奨学生ではない医学生も参加し、学習会を通じて奨学生や医ゼミの参加者も増えて います。地域に正面から向き合い、地域貢献に使命感とやりがいを感じる医学生の育成にとりくむ決意が語られました。
千葉はソーシャルワーカー部会の二年間のとりくみを報告。月一回の学習会に全員が参加し、事例を持ち寄り、問題点や実態の共有を積み重ねているそうで す。部会で作成した政策の具体化として、小委員会を設置し、学習会開催や職員育成、職能団体への加入、資格取得の推進などにとりくみ、成果を上げていると のことでした。平和問題にも正面からとりくみ、原水禁世界大会や辺野古連帯支援行動への参加につなげています。総会議案にある、ソーシャルワーカーは人権 の守り手として最前線での活動が求められる、と自覚を深め日々実践していくことの決意が述べられました。
他の発言も非常に貴重で、有意義な議論ができました。最後に共同組織の方から、活発な議論に「これが民医連なんだ、と感じた」との感想をいただきました。
(民医連新聞 第1520号 2012年3月19日)