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民医連新聞

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フォーカス 私たちの実践 医療安全対策をすすめよう(6) 山形・本間病院 自主活動「トランスファー部」創設 ズボンをつかまない移乗の普及へ

 山形・本間病院のリハビリテーション科では、二〇〇九年一二月に有志で「トランスファー部」を創設。週一回の学習会を続けなが ら、患者・利用者の危険を回避し、スタッフの腰痛も予防するトランスファー(移動・移乗)技術の習得と普及をめざしています。同部の創設者で、第一〇回学 術運動交流集会で発表した土井崇科長(理学療法士)に聞きました。

 看護・介護の現場で移乗は日常業務であり、いかに患者・利用者さんを安全に移動させ、スタッフの腰痛などを防ぐか、かねてから気になっていました。
 リハビリの現場でも、ズボンをつかんで移乗させる方法をよく見ます。このやり方ではズボンがのびてしまい、力が十分に伝わりません。介助中に患者さんの 膝が折れるなど、バランスを崩してしまうと危険です。介助者にも無理な力が生じ、腰を痛めてしまいます。職員や実習生の中でもこうした移乗をしているのが 気になり、聞いてみると「学校でこう習った」という返答もありました。
 「安全かつ腰痛を予防する移乗」の技術について、最新の情報やさまざまな方法について互いに学習・研究し、技術を高めたいと考え、自主活動としての「ト ランスファー部」の創部を思い立ちました。具体的な目標は、「ズボンをつかまない」「自らの腰痛を予防する」「患者に危険のない」移乗技術の習得と普及で す。

オリジナルDVDを作成

 部員を募集すると、理学療法士と作業療法士が一人ずつ(ともに二〇代)入部しました。週二回(現在は週一回)三〇分~一時間程度、文献やDVDをもとに、根拠に基づいた技術習得に努めました。
 練習は一人ではできません。互いに患者役と介助者役になり、「もっとこうした方がいい」と意見を出し合いながら、繰り返し行いました。
 ある程度の技術が身についたところで、自ら実践している様子を録画し、学習用のDVDを作成。学習会を企画し、法人内で患者・利用者の移乗を行う職種に 参加を呼びかけました。講師は三人の部員です。「寝返り・起き上がり」「移乗(部分介助)」「移乗(全介助)」の三種類に分け、それぞれ三〇分、計四回で 修了するコースです。看護師、介護職、保健師、ケアマネジャー、事務職員が参加してくれました。部員が直接指導し、参加者には患者役も体験してもらいまし た。
 「勉強になった」という声があった一方で、学習会の時間が短いこともあり、「一回の講義では、現場に出た時になかなか活用できない」「今までのやり方をすぐには変えられなかった」などの声も多く聞かれました。
 二〇一〇年度からは、年度初めに行う新人看護師研修にも参加。限られた時間だったので、きちんと技術を伝えることは難しかったです。現場に出る前の人が 対象だったので、「学校では習わなかったが、なるほどと思った」など、新鮮な感想も寄せられました。
 その後も、病棟の看護師からの要請など、講師依頼は続いています。起き上がりや車椅子への移乗だけでなく、ベッド上の患者移動の方法など、体位交換時の指導もしています。

技術向上の必要性を痛感

 技術を普及するには、根拠に基づいた説得力のある、私たち自身の技術の習得が必要不可欠だ と感じました。一度で習得できる技術ではないので、反復・継続することが大事です。同時に、他部門、他職種に対しても、積極的に講習会を開催し、興味を 持ってもらうことが普及の第一歩となることを実感しています。
 他部門からの講師依頼が増えてきた一方で、リハビリスタッフの関心が薄く、部員がなかなか増えない現状もあります。結果として、ズボンをつかむ移乗はあまり減っていません。
 今後はその原因を探り、実は効率が悪く、危険で不快なズボンをつかむ移乗について理解を深め、多職種のスタッフに注目される部活動を展開し、部員を増やしていきたいです。

(民医連新聞 第1519号 2012年3月5日)