介護報酬改定の影響と対策 実質0.8%のマイナス改定 訪問介護、施設などで特に厳しく
今年四月から実施される改定介護報酬の内容が固まりました。改定の概要と現場に与える影響、対応の基本的視点について考えます。(新井健治記者)
改定の概要
今回の改定率はプラス一・二%(在宅一・〇、施設〇・二%)ですが、介護報酬ベースで二%強に相当する介護職員処遇改善交付金を組み入れたため、実質は〇・八%を超えるマイナス改定になりました。現場の奮闘に報いる改定とは、とうてい言えません。
また、地域区分の見直しとそれに連動した報酬単価も改定されました。報酬全体をいったん〇・六%下げたうえで、都市部に上乗せしています。この見直し で、「乙地」では札幌市や岡山市など全事業の報酬単価が引き下げられました。北海道勤労者在宅医療福祉協会は、「試算すると、事業全体で一億円を超える減 収」と危機感を強めます。
改定の中身には、介護保険法「改正」と「社会保障・税一体改革」の内容が太く貫かれています。各事業所の当てはめ作業で、改定の影響が大きいのは訪問介護の生活援助、通所介護、施設の三つ。
生活援助は時間区分と報酬が見直され、改定前の「三〇分以上六〇分未満」(二二九単位)と「六〇分以上」(二九一単位)が、「二〇分以上四五分未満」 (一九〇単位)と「四五分以上」(二三五単位)に、大幅な時間短縮と報酬削減となりました(図1)。現場からは一人暮らしや老々世帯をはじめ、多くの利用者の生活に支障をもたらすと、強い怒りの声が上がっています。
通所介護は時間区分が大幅に見直され、最も利用者が多い「六~八時間未満」が「五~七時間未満」「七~九時間未満」になります。多くの事業所は職員の勤 務時間に合わせて六~七時間で組んでおり、「五~七時間未満」の時間区分では報酬ダウン。「七~九時間未満」にすれば増収ですが、勤務体制の変更など新た な対応が必要です。
施設の基本報酬(施設サービス費)は軒並みマイナスで、特に要介護1、2の報酬が大きく引き下げられています(図2)。あわせて特養ホームでは、多床室の介護報酬がより引き下げられました。軽度の利用者、低所得者を施設から締め出す方向が鮮明になりました。
現場の対応策
前出の北海道勤労者在宅医療福祉協会の場合、地域区分に加え、通所介護の時間区分の見直し が減収につながっています。同法人の小内浩さんは「今は六時間半のサービスで、このままでは五~七時間未満の時間区分に当たり約八%のダウンが予測されま す」と指摘。さらに住宅併設の事業所が多いため、送迎加算がなくなる影響も多大です。
対策として「七~九時間未満」への時間変更も検討していますが、「日の短い北海道の場合、早く帰宅したい利用者も多く、細かなアセスメントが必要です」と言います。
利用者守ること基本に
全日本民医連介護福祉部の林泰則理事は「利用者の生活を守り抜くことを基本に、各法人の総 合力を発揮して的確な対応を積み重ねていくことが必要です。同時に重度ケアや看取りへの対応、医療との連携強化など、改定報酬への対応を介護の質の向上や 地域の要求にいっそう応えていく契機にしていきましょう。こうしたとりくみを通して、制度の問題点を明らかにし、改善を求める運動につなげていくことも重 要な課題です」と指摘します。
今回の改定は診療報酬と同時改定で、「社会保障・税一体改革」で打ち出されている二〇二五年に向けた医療・介護提供体制再編の第一歩です。中長期を見据 え、医療も含めた総合的な事業方針・計画づくりが求められています。
(民医連新聞 第1519号 2012年3月5日)