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民医連新聞

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第40回総会 学ぼう!運動方針案 (2)医療活動 柱は質向上と8つの重点課題 ―2年間の活動を確信に

 第四〇回総会運動方針(案)を読み解く特集第二弾は、「医療活動」について。「人権を守り抜く無差別・平等の医療」を掲げ、医療の質向上をめざしてきた二年間の活動はどうだったのでしょうか。五十嵐修・医療部副部長に聞きました。

「見える化」すすめるQI事業

 今期(第三九期)の運動方針は、「総合的な医療の質の向上」と「医療活動の八つの重点課題」(図1)を、医療活動の二つの柱に位置づけました。二つの柱は積極的に受け止められ、貧困と健康格差、地域医療のあり方や医師養成について、各地で活発な議論が行われました。総じてこの二年間で、それぞれ一定の前進があったと感じています。
 三九期の特徴的なとりくみとして挙げられるのが、二〇一一年に始めた「QI推進事業」で、「総合的な医療の質の向上」の具体化に当たります。QI事業 は、民医連加盟の病院における医療指標の設定・評価・改善・公開と、その組織機構(PDCA管理サイクル)を確立・推進していくとりくみです。現在、七領 域・二八の医療指標(図2)を設定し、六六病院が参加しています。
 しかし、まだその内容が、管理部など一部にしか共有されていない現状も多いようです。また、医療指標をただの数字にせず、どう読み解き、私たちの医療活 動に活かしていくかは、これからの課題です。まずは、QI事業へ踏み出した、土台ができた、前提となる指標が確立できたことの意義は大きいと思います。
 民医連に先んじてQI事業にとりくんでいる聖路加国際病院では、自分たちの医療活動を数値化し、指標として誰にでも見えるようにすることで、パフォーマ ンス効果が確実に良くなったということです。患者さんとの関係で、地域の中の病院として、自分たちの医療活動を「見える化」する、その機構がQI事業で す。
 たとえば、私が勤務する下越病院(新潟)では、死亡退院率が近隣医療機関の平均より高くなっています。これをどう読み解くか。終末期の患者や高齢者を機 械的に家に帰したり、他の施設に移したりせず、最期まできちんと診るという姿勢の現れかもしれません。
 事業の目的は数字を出すことではなく、その背景を分析し、医療の質の向上、そして「人権を守り抜く無差別・平等の医療」の実践に結びつけることです。
 民医連はこれまでも現場から事例を持ち寄り、それをもとにより良い医療の提供や、社会保障拡充の運動に結びつけてきました。たとえば、「国保等死亡事例 調査」や無料低額診療事業を通じて、国民が必要な医療にかかれない実態をつかんできました。SW委員会が実施した「医療費・介護費調査」も、すぐれた調査 活動です。
 こうしたすぐれた経験に、QI事業で明らかになる指標をリンクさせていけば、民医連の医療活動が重層的に見えてきて、医療の質の向上に結びつけられるの ではないか。私は、民医連の新たなあり方が生まれてくるのでは、と期待しています。
 また、医療崩壊の中、他の医療機関などとの連携は、民医連の中小病院にとっても欠かせません。「地域の医療を守る」「地域の住民の命と健康に責任を持 つ」―、その“要”になりたいと、多くの民医連の病院が考えています。そのために、どこをブラッシュアップし、どういう点で地域医療に貢献していくか、ま た地域分析をする際にも、このQI事業を活用できるようにしていきたいですね。

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健康権保障の実践を

 二年前の三九回総会で打ち出した「健康権」(第四〇回総会議案「議案用語解説」※38参照)は、引き続き今後の医療活動の軸になります。これは、WHO憲章前文や世界人権宣言に明文化された「到達可能な最高水準の身体的および精神的健康を享受する権利」のことです。
 私自身、憲法二五条に規定された「生存権」は意識してきたつもりですが、「健康権」に到達し、すっきりしました。健康権は「最低限の生活」ではなく、 「到達しうる最高水準」という考え方です。一人ひとりがかけがえのない存在であり、等しく健康に生きる権利を有している。そして、その障壁となる要素は解 決すべきだという考え方です。日本政府も健康権を規定した国際人権条約を批准していますから、国民の健康権を保障する義務があります。
 しかしいま、六人に一人を占める相対的貧困層の健康問題はきわめて深刻です。方針案でも触れられている通り、若者を中心に非正規で働く人が増え、生活は 成り立たず、職を失ったり、医療にかかれなかったり…。日々の診察でも、腰痛や胃潰瘍の現役世代が目立ち、無理な働き方の影響を感じます。格差や貧困、ス トレスなど社会的要因によって、特に社会的弱者の健康権が脅かされています。
 診察室で病を診ているだけでは、健康権を保障することはできません。問題を抱えた患者さんに寄り添い、いっしょに解決方法を考え、できうる限りの健康権 の実現を、地域住民、共同組織とともにめざすことが、私たちには求められています。医療従事者は「健康権保障」の重要な担い手だからです。
 私のいる新潟民医連は長年、新潟水俣病の問題にとりくんできました。水俣病発生から数十年たった今も症状を訴える人は後を絶たず、職員も手弁当で住民検 診を行い、患者の掘り起こしや聞き取り調査、裁判にも参加してきました。また、子どもの医療費無料化や特養待機者の解消なども、行政に訴えてきました。今 後は福島第一原発事故によって、現在と未来にわたって「健康権」を脅かされる人たちに対しても、同じようにとりくむつもりです。
 こうしたことが健康権保障の実践であるし、民医連の運動そのものです。確信をもち、健康権を軸にした活動をさらに豊かに広げていきましょう。

(民医連新聞 第1518号 2012年2月20日)