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民医連新聞

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相談室日誌 連載343 生活保護受給者数 このまちで増えないのは 田中ひとみ(長野)

 全国的に生活保護の受給者数が増加する中で、I市は受給者数が横ばいの自治体です。
 六〇代のAさんは、住宅ローンの返済のため、年金を受給しつつ宅配業を営んでいました。胸痛があっても働き、一昨年一月に受診した時には、大動脈解離で 即日入院。バイパス手術を受けました。六月初めに当院に転院してきた時には、兄弟からの入院費の援助は厳しくなり、六月一五日、生活保護の申請に行きまし た。
 しかし、住宅ローンを理由に受け付けてもらえませんでした。ローンは兄が返済することにし、生活保護を申請して、ようやく申請が受理されました。しか し、一カ月半を過ぎても、結果の通知がなく、退院にむけた住宅改修も進められません。市に問い合わせると「土地と住宅の所有が問題」との返事でした。
 地域の持ち家率は高く、保護が認められています。杖歩行にまで回復したAさんは帰宅を望んでいます。しかし、市は「本人の死後、家や土地を処分して、収 入があれば出した保護費を返してもらう。入院費を生活保護で出すと、返済額は一〇割だが、生保を受けずに国保の三割負担と限度額認定証を利用すれば数万円 で済む」といってきました。
 入院費は払えないので、申請しましたが、八月一八日に却下されました。Aさんの年金収入が月一万九〇〇〇円しかなく、兄弟の援助が厳しいことも市は認めるものの、生活保護申請は退院日に受け付けるとの話でした。
 七〇代のBさんは、一昨年一一月と一二月に生活保護申請に行ったが、受け付けてもらえなかったと年末のSOS相談会に来ました。市に問い合わせると「B さんの話に一貫性がない」との回答。確かに、Bさんは約束の日時を忘れてしまうなどの傾向がありました。診察の結果、軽度の認知症でした。その事も市に告 げ、一月七日に生活保護の申請が受理に。そして保護費が支給されたのは、二月九日でした。
 AさんBさんともにI市の住民です。受給者数が変わらない背景には、窓口のワーカーが事情を知っても、上司に相談なしでは申請書も出せない異常な制度運営の実態があるからです。

(民医連新聞 第1518号 2012年2月20日)

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