被災地発(8) 震災を乗り越え9カ月ぶりに診療再開 宮城長町歯科
東日本大震災で全壊した宮城民医連の長町病院附属歯科クリニック(仙台市)が、昨年一二月一日に移転先で診療を再開しました。「心待ちにしていた」という地域住民の期待に応えての再出発に、職員のやる気もみなぎります。
地震で建物が全壊
同クリニックは一九九二年に診察ユニット一〇台で開設。地震発生時は診療の最中で、幸い患者、職員に被害はありませんでしたが、建物が傾くなど全壊、昨年九月に取り壊しました。
法人は新たな場所での再出発を決めて物件を探してきましたが、近場でなかなか見つからずに時間がかかりました。再開までの間、職員は古川民主病院歯科 (大崎市)などに勤務先を移して仕事を続けてきました。患者、友の会、職員から寄付金を募り、再開費用の一部にあてました。
一日午前九時から開所式が行われ、テープカットの後、山岸定男所長が挨拶。宮城厚生協会専務の長澤清光さん、長町病院副事務長の花木かよ子さん、長町病院友の会会長の川村三夫さんが祝辞を述べました。
二六六日ぶりの診療再開に、「本当に患者さんは来てくれるのか」との不安もありましたが、「やはり長町歯科に通いたい」と大勢の患者が来院し、三週間先まで予約が埋まっています。
「震災の翌日に診療の予約を入れていた。九カ月ぶりに診てもらえて、ほっとした」、「他のクリニックには行くつもりはない。再開してくれて良かった」と の患者の声に、職員も「地域の方といっしょにがんばってきたのは間違いなかった」、「期待の声にしっかり応えていきたい」と話します。
ユニット3台で
新たにオープンした場所は、地下鉄長町一丁目駅前の好立地。以前のクリニックからは徒歩七分ほどのビルの一階で、新たな患者の利用も期待できます。
クリニックは当面、山岸所長と歯科衛生士の千田陽子さん、佐藤美枝さん、大友裕美さんの四人体制。診察ユニットは三台と以前より規模を縮小してのスター トです。当初は古川民主病院歯科や北海道勤労者歯科医療協会などから歯科衛生士の応援が入りましたが、今は専任の事務職を配置せずに、最少人数でがんばっ ています。
山岸所長は「皆さんのご支援で再開することができました。スタッフ一同力を合わせ、地域、友の会の皆さんの健康向上の一助となりたい」と言います。
患者第一号の鈴木和子さん(75)は、亘理町の自宅が津波で半壊し、しばらくは避難所で生活していました。「二〇年近く長町歯科に通っており、どこにも 行かないで待っていました。入れ歯の具合が悪いので、早く診てもらいたい」と話していました。(宮城民医連災害復興ニュースより)
(民医連新聞 第1517号 2012年2月6日)