第40回総会 学ぼう!運動方針案 (1)情勢 国民に背を向けた民主党 ―政権交代からの2年間
皆さんはもう、「第四〇回総会運動方針(案)」を手にされましたか? 「情勢」「医療」「職場づくり」…今号から三回に分けて、学びを深める特集をお届けします。第一回目は「情勢」です。
前回の第三九回総会は、歴史的な政権交代の五カ月後に開かれました。民主党は当時、「『構 造改革』から国民を守り、国民生活第一を貫く」とスローガンに掲げていました。マニフェストには、社会保障の年二二〇〇億円削減の転換や、公的医療費を OECD平均並みに増やす、医師増員、介護・福祉充実など、民医連の要求を反映したものも多数ありました。前総会決議では「傍観者にならず、運動と提案力 を高め、『連帯、参加、共同』の運動の『要』として役割を果たす」と明記しました。その後二年、「国民生活第一」は実現したでしょうか。
▼国民の暮らしは
民主党は完全に「構造改革」路線に逆戻りしてしまいました。自公政権と同じく「大企業とア メリカ優先」、「国民生活後回し」をひた走っています。労働者派遣法の見直しや、後期高齢者医療制度廃止などの国民との約束には背を向けたまま。一方で大 企業には特権的な減税や証券優遇税制などで優遇し、一九九七年に一四二兆円だった内部留保は、リーマンショックがあったにもかかわらず二〇一〇年には二六 六兆円に!
この間、民間平均賃金は四六七・三万円(九七年)から四一二万円(二〇一〇年)と五五万円も下がりました(図1)。長期間賃下げを続けているのは、欧米諸国と比べても日本だけです(図2)。非正規労働者は全体の三四%で、九〇年以降最多。女性は過半数の五四・四%が非正規雇用です。
この結果、年収二〇〇万円未満の勤労者が一〇〇〇万人を超え、自殺者は一四年連続で三万人以上という事態が続いています。多くの人が命と健康の危機にさ らされながら、最低限の医療すら受けられなくなっています。全日本民医連が調査した、経済的理由による手遅れ死亡事例は、二〇一〇年の犠牲者数が調査開始 以来最多の七一人となりました。「医療費・介護費相談調査」でも、SWが受けた相談のうち四分の三以上が月収一五万円未満(うち三割超が無収入)で、相談 後に死亡したケースも一四一件ありました。
▼冷水浴びせる消費税
昨年、東日本大震災と福島第一原発事故(図3)が起きました。この緊急時に野田首相が掲げたのが「社会保障・税一体改革」です。「希望を取り戻す一歩を踏み出せるかは、一体改革の成否にかかっている」として、明言したのはなんと消費税の引き上げ。一四年四月に八%、一五年一〇月に一〇%まで引き上げるとしています。
消費税は、被災者も負担します。五%上がれば、被災三県では五三〇〇億円の負担増で、現在の住民税四〇五〇億円を上回ります。逆進性の強い消費税は、低所得者ほど負担の重い不公平な税です(図4)。これを引き上げることで、野田首相が言うように「希望」を取り戻せるとは、国民も考えていません(図5)。
一九九七年に三%から五%に引き上げられた時も、景気は大打撃を受け、その後長く低迷を続けています。当時を上回る値上げは、国民生活をさらに疲弊させ、日本経済を崩壊させかねません。
▼基地問題・定数削減など
全日本民医連は二〇〇四年以降、沖縄県名護市辺野古地区の新基地建設に反対する住民運動に呼応し、「辺野古支援・連帯行動」を二五次にわたって続けています。
民主党は当初、マニフェストに普天間基地の「県外移転」を明記していましたが、それを覆し、「日米同盟の深化」を強調しています。憲法九条を持つ国であ りながら、年間約五兆円の軍事費に加えて、毎年一八〇〇億円超の「思いやり予算」を米軍につぎ込んでいます。
野田首相は「政治家自身が身を切る姿勢が不可欠」として、衆院比例定数を八〇議席減らすとしました。国会の議席は民意を国政に反映するもの。「身を切 る」なら、国民の税金を各党で山分けする「政党助成金」三二〇億円(図6)こそ、まず廃止すべきです。これは国会議員四五七人分の経費に匹敵します。仮に八〇人減らしても、政党助成金の六分の一程度(五六億円)にしかなりません。
(民医連新聞 第1517号 2012年2月6日)