相談室日誌 連載341 介護保険料滞納の制裁 ―自治体交渉につないで 岩木勢司(岡山)
介護保険料を滞納したことでペナルティーを科せられ、介護サービスが受けられないという相談が目立っています。二〇一一年は、五件で前年よりも増え、問題は深刻化しています。
介護保険サービスの利用料は本来一割負担です。しかし保険料を滞納していると、制裁として以下のような給付制限がかかります。
(1)一年以上…費用の一〇割を一度利用者が負担、申請すれば保険給付分(九割)が返金される償還払い(2)一年半以上…保険給付の一部または全部が一 時的に差し止め(3)二年以上…利用料が三割負担になり、高額介護サービス費も受けられなくなる。保険料は以前に遡って支払うことができず(時効)、制裁 が避けられない。
当院の保険料滞納のケースは二年以上の滞納者がほとんどでした。実質、二年以上滞納し、自己負担が三割になると、介護が必要になってもお金がない人は サービスが受けられません。在宅復帰や施設入所もできず、結果として本人の生命・生活・人権も守れません。
また、問題は高い保険料にもあります。年金が年額一八万円以下の人でも、六五歳以上の保険料は、最低で月二三八〇円(岡山市)。低所得にも関わらず、保険料が請求されています。
当院ではこれらの問題で、独自に対市交渉を行いました。
まず「家族が肩代わりするなど、支払う意思のある人には時効をなくし、全額遡って支払えるようにできないか」と交渉。しかし市側は「国の法律に反する条 例はつくれない。滞納者へ電話や訪問、文書で働きかけて、二年以上経つ前に分納などの相談をしたい」との返答。
そして、保険料の見直しや、支払う意思がある人に対しての方策を、引き続き検討事項としました。市議会にも働きかけ質問でも取り上げてもらいましたが、進展しません。
交渉を通じて、改めて行政が滞納の実態や問題を知らないことが分かりました。もっと現場の声を届けていかなければ、と感じています。
「滞納があると認定調査にも来ない自治体がある」と聞いています。みなさんの自治体ではいかがでしょうか。
(民医連新聞 第1516号 2012年1月23日)
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