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民医連新聞

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“地元”でとりくむ被災者支援 避難した母親たちとつながって 京都民医連

 大震災から一〇カ月。福島県では六万人超の県民が、県外に避難しています(一二月二六日現在)。避難先は全県に(表)。放射能の 影響から逃れようと、母子だけでつながりのない土地に自主避難しているケースも少なくありません。京都民医連では、そんな人たちへの支援を始めています。 (木下直子記者)

 一二月四日朝、京都城南診療所(伏見区)前に停まったワゴン車から、母子が続々降りてきました。避難生活を送る人たちを対象に京都民医連が初めてとりくんだ健康診断です。飛び入りを含め、二七人が受診しました。

“医療の情報欲しい”

 同県連と避難者たちの接点ができたのは、昨年八月のことでした。
 京都府では避難者を公営住宅に受け入れています。その中の一つが京都城南診療所に近くにある公務員宿舎です。ここには現在約八〇世帯二二〇人が入居中。 八月には避難者たちが「桃山ふれあいの会」というグループを結成しました。会で要望を集めると、子どもの内部被曝やこの先の健康不安、放射能に関する正し い知識が欲しい、という声が切実でした。仕事で福島県を出られない父親と離れて避難した母子も多く、孤独な子育てのストレスも少なくありません。
 そこで当初からこの官舎の避難者を支援してきた近隣の住民たちを介して「医療面での支援ができないか?」と、同県連に相談がもちかけられたのです。

 すぐさま岸本啓介事務局長や酒井富喜子さん(看護師)が懇談し、京都民医連として支援することにしました。
 一一月から、集会所で赤ちゃんマッサージや、免疫力のつく食事づくりなどをテーマに、助産師や栄養士などが事業所から出向き、健康講座を開いています。
 「数人来ればいい」と準備していますが、参加は毎回予想を超えて一〇人ほどに。ここに顔を出したことがきっかけで、ふれあいの会に参加する人も。
 「講座は、続けられる範囲のものです」と酒井さん。「職員もこの場で接するお母さんたちの話から、福島と京都の二重生活の苦しさを教えられています。何 かあった時のささえになれるよう、緩やかでもつながっておきたいと思っています」。
 接点を持つ中で、体調を崩したお母さんが京都城南診療所の無料低額診療事業を利用して治療する、という出来事もありました。二重生活には経済的負担も伴 います。「医療のバックアップは心強い」とふれあいの会代表の西山祐子さんは語ります。
 同診の尾浦邦彦事務長は「桃山にいる避難世帯の約半数がまだ会に入っておられません。診療所の次の課題はこの人たちとのつながりを、どう作るかなんです」と。

自主避難者への公的支援を

 今回行われた健診は大人たちが対象。健診項目は一般健診に甲状腺の検査を追加。医師は二人体制にし、十分話を聞けるよう配慮しました。
 受診者に出身を聞くと、自主避難者が多く、福島市や郡山市、会津地域のほか茨城県や宮城県からも。会には入っていないが健診には来たというAさんも、住 んでいたのは福島市。避難区域には指定されていませんが、四歳の子どもがおり、高めの放射線量が心配で出てきたといいます。「二人目の子どもを産んでいい の? という不安もある」と。願いは「帰りたい」。新築した家に住み始めた一週間後に震災に遭遇しました。
 「今日の健診は、長期にわたる健康管理のスタート時点の『記録』です。これを基準にして今後の体調変化をみていければ」と、同診の永田文雄所長。「いま 京都に避難中の皆さんが今後生活の場を移すことも考えると、追跡的な健康調査が必要。それには公的なしくみが欠かせません」と強調しました。

 その後も、健診希望者が現れ、これまでさらに八人が受診しています。
 なお、県連では、要望が多い子どもたちの健診も計画中です。

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(民医連新聞 第1516号 2012年1月23日)