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民医連新聞

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命を救ってきた 民医連初 無料低額診療事業交流集会 窓口負担軽減のために…

 一二月三~四日にかけて、全日本民医連初となる無料低額診療事業交流集会が東京で行われ、全国から一四三人が参加しました。現 在、無料低額診療事業(以下無低診)を行っている民医連の事業所は二五八カ所です。集会の目的は、無低診のとりくみを広げ、悩みや課題などを交流し、国保 法四四条適用など、医療費自己負担の軽減を求める運動をすすめることです。(矢作史考記者)

 藤末衛全日本民医連会長は開会あいさつで「無低診は格差と貧困が広がる中で、受診抑制を入り口で防ぐために始めました。この事業で多くの命が救われています。これを広めると同時に、医療費の自己負担を少なくする運動も必要」と述べました。
 全日本民医連SW委員会の庄司美沙委員長が、医療費・介護費調査の報告(本紙一二月五日号既報)と、問題提起を行いました。
 指定報告では六人が発言しました。勤医協札幌病院のSW福原宏さんは、札幌市では子どもの五人に一人が就学援助を受けていると紹介。「学校や教育委員会 など一三〇カ所を訪問し、就学援助世帯にも無低診の適用を広げた」。
 沖縄からは中部協同病院の新垣哲治さん(SW)が、共同組織といっしょに行動した経験に触れ、「組合員さんが自治体や学校などに無低診を広げた」と語りました。
 無低診をすすめる意義について発言したのは、尼崎医療生協の杉山貴士さん(事務)。「無低診とあわせ、国保の減免制度である四四条も活用し、医療の公的責任を明確にしよう」と呼びかけました。
 高知や岐阜、東京からも報告がありました。

□無低診から見えた課題

 分科会は「事業所での実践・運営上の悩みの交流」「国保四四条等医療費自己負担の軽減を求める運動面での活動交流」「無低診の開始を検討している担当者の交流」の三つのテーマで行いました。
 活動交流の分科会では冒頭、参加者に「国保四四条を使った経験があるか」と質問。「ある」と手を挙げた人は、五分の一程度にとどまりました。国保料滞納 や収入が前年の半分以下でないことを理由に適用されないなど、基準が厳しいためです。
 一方で、収入が前年比で激減していなくても、そもそも低収入だったことから四四条適用を求め、裁判で認めさせた秋田での例も紹介されました。千葉では国 保一一〇番で結びついた人たちと集団申請にとりくんでいます。
 四四条の活用がすすんでいる大阪府では、東大阪市で八%、八尾市で五%が利用しています。継続して利用を広げるために大事なのは四四条の予算を自治体に確保させることだと紹介されました。
 自治体独自の医療費助成についても交流。石川県金沢市では、「療養援護」という事業があり、ひと月の収入が生活保護基準の一・二倍までの世帯の医療費を 減免するものです。富山市では、障害等級の一~六級までの医療費助成があると報告されました。
 二日目にはNHKの板垣淑子チーフプロデューサーが、「無縁社会」をテーマに記念講演をしました。

□薬剤費の解決は

 討論の中で浮き彫りになった課題が、薬代です。薬局が無低診の対象とならないため、ほとんどの薬局で無低診利用者の薬代を未収金として扱っています。
 北海道保健企画の松木一紀さん(事務)は「未収金の解決は難しい。治療は中断させられない。未収金扱いにさせないよう薬局から行政に訴えないと」と話しました。
 こうしたなか、高知市のとりくみは注目されています。すさき診療所の池田磨奈さん(事務)は「無低診開始後、高知市には無低診にたどり着いた困難事例を 報告してきた。実態を踏まえた交渉で、薬剤費補助制度ができた」と報告。市内のほとんどの調剤薬局が無低診の患者受け入れを表明しています。
 徳島からは、高知市の経験に学んで県や市に事例を持ち込み、無低診を薬局でも行えるよう要請する計画だとの発言がありました。
 集会に参加した青森のSWの竹田沙織さんは「無低診で薬代の問題や事務手続きで業務は増えた。意義が再確認できたので、持ち帰りたい」。富山のSWの吉 田晶子さんは「富山市に福祉医療はあるが、国保四四条の利用はまだ。他県連のとりくみが参考になった」と話していました。

□全日本民医連が記者会見

 集会に先立ち、全日本民医連は、医療費・介護費相談調査の記者会見を行いました(写真右)。
 会見では三〇二九件のデータをもとに稼働層の貧困や、医療費負担が重いために受診抑制が起き、症状が進行してから受診する人がいると報告しました。

(民医連新聞 第1514号 2011年12月19日)