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民医連新聞

民医連新聞

第10回全日本民医連学術・運動交流集会in東京 貧困、まちづくり、チーム医療 テーマ別セッション

 テーマ別セッションは、「健康権を確立し貧困問題の克服を」「超高齢社会に向けたまちづくり~あるべき『地域包括ケア』の実現 へ」「わたしたちのチーム医療について考える~あらためて民主的集団医療について」の三つに分かれて基調報告やシンポジウム、フロアからの発言がありまし た。要旨を紹介します。

子どもの声なき声を聞く

健康権を確立し貧困問題の克服を

 「子どもの貧困」に絞って議論しました。立教大学の浅井春夫教授が「子どもの貧困像と打開していく課題」と題して基調講演。続くシンポジウムでは、学校、病院、歯科の三つの現場で見える子どもの貧困が報告されました。
 浅井教授は、日本の子どもの貧困は悪化し、「六人に一人」が貧困状態にある、と報告()。「事実の背後にある社会の構造と政策の貧困を考え、子どもの声なき声を聞く努力が必要」と述べました。
 また、日本における子どもの貧困の特徴として、(1)所得再配分が機能せず貧困を減少・緩和できない、(2)ひとり親世帯の貧困率が五割超でOECD三 〇カ国中最下位、(3)大人二人以上世帯でも同二二位、(4)若者支援の薄さ、の四点を指摘。
 「子どもの場合、経済的貧困が暴力やあきらめなどといった『貧困の文化』につながり、自己肯定感の低下や破壊的行動などの『発達の貧困』へと発展する。 イギリスなど諸外国が子どもの貧困根絶を『決意』し、数々の施策を打っているように、日本政府も決意すべきだ」と語りました。民医連に対し「研究と運動で 問題解決に動いてほしい」と求めました。
 シンポでは、日本高等学校教職員組合の鈴木敏則さんが、経済的困難が集中する定時制高校生の現状について報告。通学に協力的な勤務先も減り「ダブルワー クで、駅のトイレに腰掛けて睡眠をとる」といった生徒がいるなど、衝撃的な実態を明らかにしました。
 健和会病院(長野)の小児科医・和田浩さんは、子どもの貧困をつかむ視点を述べ、「この問題には民医連もとりくみ始めたばかりだが、先駆的だ。他の医療 者の意識を喚起すべく、学会や論文などで発信を」と、呼びかけました。
 相互歯科(東京)の歯科医師・岩下明夫さんは、子どもの口腔崩壊の深刻事例を見せながら、これらの事例には貧困やひとり親など共通した問題がある、と報 告。「働く人々に人間らしい生活を保障する施策が必要」と語りました。

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安心して徘徊できる町を

超高齢社会に向けたまちづくり

 民医連でも近年増えているグループホームや小規模多機能施設、地域包括支援センターなどの果たすべき役割や地域づくりについて、活発な議論が交わされました。
 冒頭、全日本民医連介護・福祉部の山田智部長があいさつし、「安心して暮らし続けられる地域包括ケア(まちづくり)は、民医連が一貫して追求してきた介護・福祉理念の実践」と、強調しました。
 福岡・大牟田市の井上泰人さん(長寿社会推進課長)が基調講演し、同市での認知症ケアコミュニティ推進事業について語りました。同市では、認知症になっ ても安心して暮らし続けられるまちづくりを目指し、多職種・官民・地域協働、世代間交流を深め、二〇〇二年からこの事業にとりくんでいます。認知症コー ディネーターの養成(受講二年間、約七〇人が修了)や、もの忘れ検診(認知症高齢者の把握と予防)、小中学生への認知症教育、地域の見守り支援としての 「ほっと安心(徘徊)ネットワーク」などです()。
 ほっと安心ネットでは、「徘徊=ノー」ではなく「安心して徘徊できる町」をモットーに、地域の消防署や商店街、住民有志、こどもみまもり隊などと模擬訓 練を実施しています。認知症の高齢者が行方不明になってから、三〇分以内に保護するのが目標。徘徊役の人が演技に熱が入るあまり、訓練を知らない人の家に 上がり込んで騒動になったエピソードに、参加者は爆笑。「徘徊する人に声をかけるのは簡単と思っていたが、『認知症の方ですか?』とは聞けず困ったなど、 実践で得ることが多かった」と井上さんが紹介すると、うなずく人がたくさんいました。
 井上さんは、早期診断と初期支援に不可欠な医療との連携が弱いことにも触れ、「私たちがめざしているのは、誰もがささえ合う地域づくり。医療と介護の連 携の成功事例をひとつひとつ積み重ねることが大事」と強調しました。
 数人がフロアから発言。東京・すこやか福祉会の稲垣伸洋さんは、「グループホームの玄関には鍵をかけていません。町内会の行事にも積極的に参加し、出か けて帰れなくなった利用者を商店街の人が送ってきてくれるような関係ができた。一方で住民とのトラブルもある」などと報告しました。

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多職種で患者をささえる

わたしたちのチーム医療について考える

 冒頭に全日本民医連の小松孝充理事と生田利夫理事が、民主的集団医療とチーム医療のあり方について基調報告。続くシンポジウムで、四人が各事業所のとりくみを報告しました。
 高松協同病院(香川)の大西正志さん(理学療法士)は、同院回復期リハ病棟のチーム医療について発言。看護師、介護士、セラピストらがグループで患者の ケアをします。セラピストはリハビリだけでなく、患者の介助にも入ります。「介助をすることで、患者さんのADLの変化を確認できます」と大西さん。ま た、チーム内で身体レベルに合わせて介助方法を統一しているので、ADLの向上にも役立っている、と話しました。
 みさと協立病院(東京)の牛尾幸子さん(薬剤師)は、臨床薬剤師の役割について発言。同院では薬剤師が患者の入院時面接にも参加し、情報を収集します。 カンファレンスでは、その情報に基づいて積極的に発言します。「病棟では、個別指導時に服薬の大切さを説明したり、患者のバイタルをみて副作用の早期発見 に努めています」と話しました。
 埼玉協同病院の千葉妙子さん(看護師)は、急性期病院でのチーム医療について報告。同院はDPC病院ですが、地域の診療所や老健施設との連携会議を開く 中で、退院後の受け入れ環境を整え、肺炎の平均在院日数を二一日から一四・二日に短縮できました。
 水島協同病院(岡山)の小川満子さんは、NST(栄養サポートチーム)専従の管理栄養士です。NSTの活動で褥創と嚥下障害を改善できた症例を紹介しました。
 同院のNSTメンバーは、管理栄養士のほかに医師、看護師(リンクナース)、薬剤師、言語療法士、臨床検査技師、事務などで構成。週一回、カンファレン スと回診を行っています。患者の栄養状態改善のため、「多職種間で相談して嚥下機能を評価、患者さんの嗜好にあった食事を提供して、摂取量の低下を防いで います」と報告しました。

(民医連新聞 第1512号 2011年11月21日)