相談室日誌 連載339 介護保険と障害福祉の「併給」を活用して 石田真理(愛知)
Aさんは四〇代の男性です、脳出血後のリハビリ目的で当院へ入院。懸命にリハビリを続けましたが、移動は車いす、排泄は一部介助~全介助と、日常生活のほぼ全てに介助を要する状態でした。介護保険認定は要介護4。
Aさんは、自宅退院を希望しましたが、同居中の母親には身体障害があり、Aさんの介護は困難でした。家族に介護できる人が少ないAさんにとって、要介護 4という介護度で、利用できる介護保険サービスだけでは在宅生活が厳しい。そこで、Aさんが取得した身体障害者手帳(一級)が使えないか検討しました。介 護保険に加え、障害福祉サービスを併給し、(1)訪問介護七時間を毎日、(2)通所リハビリ週三回、(3)訪問看護週一回というサービスができるようにな り、自宅へ退院しました。
介護保険の被保険者である障害者が要介護または要支援状態の場合、基本的には、介護保険サービスの利用が優先です。しかし、介護保険サービスの「支給限 度額」という制約から、介護保険サービスだけでは必要なサービスが確保できない場合、障害福祉サービスで補てんできることがあります。これが「介護保険 サービスと障害福祉サービスの併給」です。
Aさんの事例から、この援助方法を今後も有効活用したいと思いました。
一方で、このことの周知が足りず、利用されていない現実も。「併給」利用率について、二〇一〇年厚生労働省調査結果から試算すると、介護保険利用者全体 のわずか〇・〇一九%(一万人に二人)。背景に、SWやケアマネの認識不足、利用要件の地域格差もあると思われます。
さらに、併給制度を自治体が積極的に知らせていないことも原因です。当院のある自治体の福祉課に理由を聞いたところ、(1)身体障害者全てが対象ではな いため、(2)介護保険優先のため、基本的に介護保険内で賄えるようにサービスを調整してほしいから、との回答でした。
今後は、援助を必要としている人に介護保険と障害福祉サービスの併給を知ってもらえるように、行政への要望などといった、ソーシャルアクションにもつなげていきたいと思います。
(民医連新聞 第1512号 2011年11月21日)