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民医連新聞

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緊急連載 「社会保障・税一体改革」を読む (2)医療 法を無視した定額負担

 「社会保障・税一体改革」は消費税増税のほか、「子ども・子育て」「医療・介護」「年金」「就労促進」について、年内にも法案とりまとめを目指しています。医療現場への影響は―。(丸山聡子記者)

 一体改革は外来患者の窓口負担(現行一~三割)に加え、定額負担(当初は一〇〇円の予定)の上乗せを狙っています。定額負担は所得や受診回数にかかわらず、受診するたびに一律一〇〇円を支払うというもの。
 江古田沼袋診療所(東京民医連)は、通院回数の多い患者の負担増を試算しました(表1)。鈴木勝利さん(64)は、C型肝炎などで月六~八回通院し三割負担の医療費は五〇〇〇円ほど。月六万五〇〇〇円の年金と個人タクシーの収入でやりくりしています。
 「一〇〇円程度なら…とも思うが、年金だけの生活を想像すると不安。医師から通院回数を増やすように言われているが、それでは月一〇〇〇円以上の負担増になってしまう」とため息。
 肝炎の進行を防ぐため、通院は命綱。「年金が少ないので、仕事は辞められない。苦しい生活なのに、当事者に説明もなく値上げするなんて」と鈴木さん。試 算では、八四歳の患者(一割負担)の場合、二倍から三倍の負担増になることもわかりました(表2)。
 同診療所の塚本晴彦事務長は、「定額負担は乳幼児や公害患者など、窓口負担免除の人にも一律にかかる。長年の運動の成果さえも踏みにじるもの」と話します。

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▼病人のお金を財源に?

 政府は定額負担の導入で一三〇〇億円が生み出せると試算(一〇〇円の場合)。「改革」の目玉である「高額療養費の自己負担限度額の見直し」にあてる考えです。
 日本医師会は、「高額療養費の限度額引き下げは急務」と前置きしたうえで、「別の病気で治療中の患者さんに負担を求める考え方は理屈が通らない」と批判。「医療に格差をもたらし、国民皆保険の崩壊につながる」と、定額負担導入反対の署名を始めています。
 ひとたび導入を許せば、二〇〇円、五〇〇円と増額されかねません。鈴木さんの場合、二〇〇円を加えると自己負担は三割から三七・二%に。これは、「負担 割合は三割を超えない」とした健康保険法等改正時の付帯決議(二〇〇六年六月)にも反します。しかも一三〇〇億円という数字には、受診抑制効果も含まれて います。

▼医療の縮小が目白押し

 一体改革には、ほかにも医療の縮小を狙う計画が目白押し。▼医療費抑制を目的に平均入院日 数を一~三割減▼紹介状なしで大病院を受診した場合の自費徴収額(現在一〇〇〇~二〇〇〇円)増額▼七〇~七四歳の窓口負担を二割に引き上げ▼薬局で買え る薬(風邪薬、湿布薬など)は保険対象から外す、などです。
 全日本民医連の湯浅健夫事務局次長は、「国民のためのように見える施策も、実は病人という弱い者同士でやりくりさせる、一体改革の本質がよく現れていま す。今でも窓口負担を払えず亡くなる人がいる。受診回数の多い慢性期や重症の患者さんほど負担が重くなる定額負担導入は、さらに命を切り詰めます」と話し ます。

(民医連新聞 第1511号 2011年11月7日)