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民医連新聞

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かあさんの「ほのか」な幸せ~眠りっこ子育てetc.~ (9)「吸引祭り」絶賛開催中の巻 文:西村理佐

 このところ台風が猛威を振るっている。もちろんその被害と比べることなどできないが、台風が来るたびに、わが家でもひと波乱ある。というのも、低気圧の影響か、帆花の「痰」が急激に増え、聴診すると肺のあちこちで雑音が…通称「かえる」が現れる事態になる。
 人工呼吸器に全面的に呼吸を助けてもらっている帆花にとって、「痰」が気道を塞いでしまうことは、イコール「呼吸ができない」ということで非常に危険 だ。そうしてかあさんはそんな事態を避けるため、帆花に四六時中はりついて吸引する、通称「吸引祭り」が開催されるのだ。そして祭りの間中、かあさんは 「痰ってなんだよっ」と舌打ちしてみたり、「ところで、なんで痰にこんなに苦しめられるわけ…」とそのたびに考え込んできた。
 健康な人にとって「痰」は、その存在すら意識することも少ないはずで、でもだからといって「痰」が存在しないというわけでもなく、咳をして外へ出すこと などで、無意識的に自分で処理しているのだ。そう思えば、「痰」は、帆花にとってだけ、特別悪いもの、というわけではない。「出たら引いてあげればい い」、そんな風に思えるようになるまでに、祭りは何度開催されただろう。「引けばいい」といっても、自発呼吸もなく咳をすることもできない帆花の「痰」 を、吸引チューブが挿入できるところまで集めることは、なかなかどうしてワザと力が必要。体を揺らし、背骨に沿ってマッサージをした後、結構逞しい帆花の 胸板を両手でガシっとつかみ、呼気に合わせて下方向に絞りつつ吸引する。これを、仰向け、右向き、左向き、3方向にして繰り返す。これを1日に決められた 時間だけで11回。
 在宅生活を始めて3年の間に、かあさんは「上腕二頭筋」というご褒美をもらった。来年度から介護職員による痰吸引が認められる方向だと聞く。こうして 「痰」と命がけの格闘をする家族にとっては「痰」が自然なもので、それを出すお手伝いが「日常行為」であるという認識が広まりますようにと願う。

(民医連新聞 第1509号 2011年10月3日)