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民医連新聞

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民医連薬局が発信した 「お金の切れ目が薬(命)の切れ目」の実態 保険薬局窓口一部負担金調査

 全日本民医連は「保険薬局窓口一部負担金調査」について記者会見を開き発表しました(九月一日)。同調査は、民医連加盟の保険薬 局で行ったものですが、約一〇〇〇件の調査票からは、薬代のために生活費を削ったり、治療を中断するなど、苦労する患者の姿が浮き彫りに。また会見では、 患者の実態とあわせ日本の高薬価構造の問題も指摘。これは薬剤師たちの「ファーマーウエーブ」の第一歩です。全日本民医連の廣田憲威事務局次長に聞きまし た。(木下直子記者)

shinbun_1509_01薬代のために借金

 「患者さんが窓口で支払う時に、一万円札を出すことが増えている」という保険薬局の職員か ら出た声が、この調査のきっかけになりました。すべての薬剤を調べると大ががりになるので、今回は薬価が特に高いインスリン、抗がん剤、リウマチの生物製 剤の三種に絞って行いました。
 調査の概要は別項の通りです。三割負担の患者の支払い額平均が約九九〇〇円。薬代のために、生活費を切り詰めている(六〇・三%)、貯金を取り崩している(二九・二%)、借金をしている人(二・七%)の存在も(図1)。
 「治療中断の経験あり」と回答した人の過半数がその理由に「経済的事情」をあげています。

高負担率と高薬価が原因

shinbun_1509_02  報告されている個別事例をみると、投与すれば明らかに苦痛が緩和できる薬を「薬代が支払えない」という理由で減らしている患者さんもいます。主治医がすす め、患者自身も望む医薬品が、経済的事情で使えないという事態は、国民に保障されている等しく医療を受ける権利の侵害であり、生存権を保障した日本国憲法 にも反していると思います。
 この原因には大きく二つあります。一つは患者の一部負担割合が高いことです。今回の調査でもそれを裏付けるような特徴がみられました。「窓口負担が重 い」と答えた人は全体で六割だったのですが、負担割合別に回答をみると負担率一割の人では、「妥当」が「重い」を上回っていたのに、負担率三割の層は圧倒 的に「重い」と回答。逆転しています(図2)。
shinbun_1509_03  もう一つの問題は、薬が高すぎることです。薬価は診療報酬と同じく、国が決める「公定価格」で、製薬企業でも勝手に値段をつけられません。しかし、新薬の 薬価を決めるルール「類似薬効方式」で、似た薬効の従来品(比較薬)がある時は、それより五~一〇%高い薬価にする、と決まっています。新薬の価格がつり 上がるわけです。
 この高い新薬が影響して、医薬品費が異常なほど伸び、医療費全体の高騰を招いている構図もあります(図3)。
 医薬品産業は他の産業と比べても突出して儲けています。新薬は最初の開発コストは必要ですが、作り始めれば安くすみ、場合によっては包装代の方が高くつ く場合もあります。マスコミはスポンサーへの遠慮から、なかなか指摘しませんが、この高薬価構造の是正は必要です。

ファーマーウエーブ

 民医連の方針でも提起されている「ファーマーウエーブ」について。「医薬分業」政策で病院 と保険薬局が分かれて久しいですが、病院薬剤師の技術料は、日常どんなにがんばっても、自分たちの働きだけでは給与がまかなえないほど低いものです。「薬 剤師がおかれている現状に怒りを持ち、自らたたかおう」と、今回のウエーブの提起になったわけです。
 「お金の切れ目が薬の切れ目」という現状の打開とあわせて、運動をすすめたいと考えています。


【調査概要】
対象:全国の民医連の保険薬局を利用している患者で、抗がん剤、インスリン製剤、リウマチ生物製剤、を使用中の人(公費を除く)
期間:2011年3~6月
回答:978件(負担割合…1割36.3%、3割52.1%使用薬…抗がん剤13.2%、インスリン70.1%、リウマチ薬1.8%)

(民医連新聞 第1509号 2011年10月3日)