被災地発(6) 仮設の「お茶っこ会」で体調管理と心のケア 岩手県大船渡市
盛岡医療生協(岩手県)は、震災で大きな被害を受けた大船渡市の仮設住宅に出向き、入居者対象の「はつらつお茶っこ会」を開いています。八月一二日、大立地域の仮設住宅(約六〇戸)で開かれたお茶っこ会を取材しました。(武田力記者『いつでも元気』)
■片道3時間かけて
同医療生協本部がある盛岡市から沿岸部の大船渡市までは、車で片道約三時間かかります。職員が部署ごとにシフトを組んで六月初めから通いはじめ、七月末からは週三回、五つの仮設住宅に入るようになっています。
当日は仮設住宅の敷地内にある談話室に、五人の女性が集まりました。医療生協からは、「在宅総合センターひだまり」センター長の鈴木幸子さんと、看護師、ケアマネジャーら四人の職員が参加。
最初に「調子はいかがですか」と話しかけながら、血圧を測定。結果は各自のシートに書き込まれ、体調の変化を把握します。体操のあと、お茶を飲みながら風船ゲームを楽しみました。
「すごい、すごい。一〇〇回できたねー」「大きな声を出すのも気持ちいい」―。仮設住宅には、もともと同じ集落に住んでいた住民が入居しています。お互 いが顔見知りとあって、終始なごやかな雰囲気。「みんなに『おもしろかった』って、言いふらして歩くべ」「人数が増えたら、風船三つに挑戦しよう」と、笑 顔で語りあっていました。
お茶っこ会が始まったきっかけは、震災直後から入った民医連の医療支援です。大船渡民主商工会の事務所を拠点にとりくまれた医療支援が、避難所でのリハ ビリ支援に移行し、同市から「仮設住宅でも支援を継続してほしい」と要請されました。
この三カ月で、職員全体の三分の一がお茶っこ会に参加。職員からは「被災者の力になろうと思って来たのに、皆さんの笑顔を見てこちらが元気をもらった」 「すべての職種が、それぞれの視点や専門性を活かせているのがうれしい」との感想が寄せられています。
■苦しい胸の内も語る
一方、笑顔ばかりではなく、苦しい胸の内を語りあうお茶っこ会になることも。家族・友人を 失った悲嘆や、生活の見通しが立たない不安は、多くの入居者に共通します。「今からローンを組んで家を建てるなんてできない」「仮設住宅は二年で出ていか なきゃいけないらしい。どうすればいいのか」など、切実な悩みも出ます。
「お茶っこ会のお誘いチラシを配っている途中で、『妻を介護していて手が離せない』と言う高齢男性に会った職員もいます。家族の介護や持病などを抱えて 引きこもっている方が心配です」と前出の鈴木さん。「要望を引き出し、コミュニティーの形成に寄り添いながら、みなさんをささえたい」と話します。
(民医連新聞 第1508号 2011年9月19日)