第32回民医連の医療と研修を考える医学生のつどい 全国から医学生184人 震災・復興学び 求められる医師像考える
八月一六~一八日、第三二回民医連の医療と研修を考える医学生のつどい(以下、つどい)が滋賀県で行われました。これは毎年、全 日本民医連が主催し、全国の医学生が民医連医療を学び、語る場にしています。医学生一八四人が集い、職員を含め四三六人が参加しました。(安丸雄介記者)
16年経た神戸から
今年のテーマは「震災と復興」でした。被災から一六年経った神戸の現状から復興のあり方、また東日本大震災での医療活動を学び、求められる将来の医師像や民医連の医療と研修について考えを深めました。
一日目は、宮城民医連の佐々木隆徳医師(坂総合病院)が被災直後のトリアージから慢性期までの災害医療活動について講演しました。透析・在宅酸素患者、 妊婦など、震災で真っ先に被害に直面する「震災弱者」がおり、もともと存在した社会的困難が震災で顕在化したと指摘。「震災をきっかけに、病院だけでなく 地域に根ざす医療が必要だと気づいた」と報告しました。
次に、被災地復興についてシンポジウム。藤末衛全日本民医連会長のコーディネートで、神戸大学大学院工学研究科教授の塩崎賢明さん、日本弁護士連合会災 害復興支援委員会副委員長の津久井進さん、兵庫県震災復興支援センター事務局長の出口俊一さんが、各専門分野から報告。
阪神・淡路大震災では「創造的復興」の名で住民不在の復興がすすめられ、復興事業が逆に住民生活を破壊した「復興災害」が起きたことが紹介されました。 いまもこの教訓はうまく活かされず、義援金が東北被災者に届かない現状などにも批判があがりました。
つどいに向け奨学生活動
一日目の夜は、つどいに向けてとりくんだ奨学生活動を交流。その中で山口大学一年生の加藤 さつきさんが学内でのとりくみを報告。佐々木医師を招いての学習会や、ポストイットで原発問題への意見をポスターに貼ってもらう「紙ツイッター」を大学掲 示板に張り、医学生の意見を聞くなどの企画をしました。
加藤さんは宮城県出身。合格発表直後に被災し、山口へ移りました。「慌ただしい大学生活で何もできずにもどかしかったけれど、講演を聞き、自分にできる ことを一つ一つ行うことが大切だと思った。山口と被災地を結ぶためにもっと行動したい」と語りました。
長田区でフィールド
二日目は神戸市長田区でフィールドワーク。まず被災地復興にとりくんだ神戸市議や専門家の リレートークを聞き、長田区が被災後に唯一人口が回復せず低所得者も多い現状などを学習しました。現地では震災後に住民要求で設立した特養「駒どりの 家」、再開発地区での商店街シャッター通りなどを見学しました。
九州大学四年生の藤本佐和さんは「悪政が弱者を苦しめている中で、地域に根を張って医療を行う医師が求められていると思った。それができるのが民医連の医療なんだと思った」と感想を述べました。
研修目前の6年生は
研修を目前に控える六年生向けには、民医連での研修への思いや不安などを同学年だけでフリートークする「六年生企画」が行われました。
琉球大学の嘉藤小枝子さんは「民医連の研修は、自分がやりたいことが幅広くできて良いと改めて思った。希望科は未定ですが、震災支援の話などを聞き、将 来はジェネラルに学んで患者さんを全人的に診られる医師になりたい」と。富山大学の唐沢知行さんは、「『復興災害』という言葉を初めて聞き、住民の声を全 く聞かない政府という発想がなかった。以前、『医師は影響力のある立場、社会的発言を』と聞いた。医師になっても自覚を持って社会に発言するのが大事と思 う」と話しました。
(民医連新聞 第1507号 2011年9月5日)