インデックスページ 原水協 安井事務局長に聞く “核廃絶の国際世論はますます強く”
広島・長崎の原爆投下から六六年、そしていま唯一の被爆国日本は、福島原発事故による危機に直面しています。八月に行われる原水 爆禁止世界大会は、東日本大震災と福島原発事故の被災者と連帯した大会になります。世界の核兵器の現状は? 核兵器廃絶の運動がどのように進んでいるの か? 原水爆禁止日本協議会事務局長の安井正和さんにお話を聞きました。(矢作史考記者)
世界の核兵器の現状
現在、世界にある核兵器は約二万二千発。その一発だけでも広島型原爆の一〇倍の威力があり、人類に脅威を与え続けています。
核兵器の九五%はアメリカとロシアが保有しています。そのほかにフランス、イギリス、中国、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮が保有しています。
核兵器は原子の核分裂や核融合の作用を利用した兵器です。核兵器が世界で初めて使われたのは広島の原子爆弾でした。この爆弾に装てんされていた六〇キログラムのウラン235のうち、核分裂したのはわずか八〇〇グラムでしたが、一四万人もが犠牲になりました。
長崎では自然界に存在しないプルトニウムという核分裂物質が使われました。わずか一キログラムの核分裂で七万人が犠牲になりました。
核兵器は、たった一発で何万人も人を殺します。さらに放射能による被爆は半世紀以上経っても被爆者を苦しめ、次の世代の健康にも影響を及ぼす恐れも指摘されています。
だからこそ、広島、長崎で地獄のような体験をした被爆者の方たちは、「人類と核兵器は共存できない」「核兵器をなくせ」と訴え続けているのです。
進む核兵器廃絶の流れ
昨年五月にニューヨークで、NPT(核不拡散条約)再検討会議が行われました。日本から一六〇〇人の代表がニューヨークに行き、「核兵器禁止・廃絶条約」の交渉開始に合意するよう求めて、六九一万筆の署名を会議に提出しました。
この会議では、核保有国を含む一八九カ国が一致して「核兵器のない世界の平和と安全を達成する」ことを目標として確認しました。
二〇一〇年秋の国連総会は、この合意をふまえて、核兵器禁止条約の締結に向けた決議(マレーシア提案)を圧倒的多数の賛成で採択しました。賛成は前回の 一二四カ国から九カ国増えて一三三カ国となっています。核保有国の中国に加えて、NPT未加盟国のインドやパキスタン、また脱退した北朝鮮も賛成しまし た。反対したのはアメリカ、ロシア、イギリス、フランスと、アメリカの同盟国。日本政府は棄権しました。
核兵器のない世界が実現しないのは、あれこれの「ならず者」のせいでも、「テロリスト」のせいでもなく、現に核兵器を持ち責任をもつ一部の核保有国の指導者たちが、なすべき決断をせず、とるべき行動をとらないからです。
世界の非核地帯も広がっています(図)。国際的には確実に核保有国を包囲しています。
二月一五日、日本原水協の提唱で「核兵器全面禁止のアピール」新署名がスタートしました。NPT再検討会議の合意の実行を求めるこの署名には、潘基文 (パンギムン)国連事務総長、八〇〇人を超える自治体首長・議長、聖路加国際病院理事長の日野原重明さんをはじめ一〇〇〇人を超える内外の広範な著名人が 賛同し、全国でとりくまれています。
民医連職員の皆さんへ
東北の被災地の平和行進で、自治体首長から「原爆も原発もいりません。みなさんの長年の努力に敬意を表します」との言葉が返ってきました。私たちが思っている以上に、福島原発事故をきっかけに放射能の怖さを感じているのだと思います。
今年の原水爆禁止世界大会では、核兵器廃絶だけでなく、いま私たちが直面しているエネルギー問題を考えるきっかけになればと思います。原発には「核の平 和利用」というキャッチフレーズがついています。しかし、核エネルギーはまだ人間がコントロールできるものではありません。膨大な放射性廃棄物(核のゴ ミ)の最終処理の方法も確立されていない状況です。
毎年、広島・長崎で開かれている世界大会。民医連の皆さんの中にも地域や職場の代表として参加される方がいると思います。ぜひ、民医連でも地域で、いっ そう新署名をひろげ、この夏を被爆者、そして福島をはじめ世界の核被害者、各国政府や世界の反核団体、全国の市民の代表の話を聞き、世代を超えて交流し、 新しい社会への展望をいっしょに考える機会にしてほしいと思います。
(民医連新聞 第1504号 2011年7月18日)
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