被災地発(2) 離島で初の健康相談会診察室で泣き出す被災者も 宮城県桂島
宮城県松島湾の離島、桂島に六月一一日、坂総合病院の医療チームが訪れ、震災後初の健康相談会を行いました。同島は津波で多くの家屋が流失。島に医療機関はなく、震災前は嘱託医が巡回診療で訪問していましたが、震災後は途切れていました。同院の神倉功さんの報告です。
■瓦礫が散乱する島内
桂島(面積〇・七六平方キロメートル)は松島湾の入り口にある浦戸諸島の一つで、人口約四〇〇人。震災で幸い死者はいませんでしたが、島内の瓦礫は手つかずの状態です。のり乾燥用の大型機械や、仙台港から流れついたと思われる大型コンテナも散乱しています。
同島には五月上旬まで自衛隊が巡回診療をしましたが、その後は同じ浦戸諸島の野之島にある浦戸診療所の看護師が巡回訪問するだけで、医師が来るのは一カ月ぶり。
坂総合病院から高津政臣副院長ら医師二人、看護師四人、友の会役員四人を含む計一五人が、船で四〇分かけて来島。また、みやぎ保健企画の金田早苗社長 と、塩釜市内の餃子製造会社が餃子の炊き出しで同行しました。
健康相談会は同島の避難所で開催。避難所の被災者一七人と島内一五人の計三二人が来場し、看護師の問診に続き医師が診察しました。三二人中、不眠の訴え が一二人、血圧一五〇を超えた人が一五人いました。
中には血圧一九〇以上で通院歴がない、血栓塞栓症の治療でワーファリンを服用中だが震災後は採血検査をしていない、ここ一カ月で急に体重が落ちたなど、 離島のため通院が困難な環境が影響しているケースもありました。気になる患者は、後日、浦戸診療所の看護師に申し送りしました。
■口にできないストレス
看護師の問診時には「体調はよい」「元気でやっている」と話した人が、診察室で医師と向き合った途端、「避難所で一人になれない。家でゆっくり寝たい」「ストレスでいっぱいだけど、薬に頼りたくない」「全然、心が晴れない」など、涙ながらに話すケースも。
佐藤美希医師は「避難所生活はストレスだが、口にすることができない」と話す人が多かった、と指摘します。「疲れかな」と首をかしげる血圧一九〇の患者 に、「本当に疲れているんですよ。休んで下さい」とお願いするとともに、受診を促しました。「医療相談というより傾聴中心でしたが、それが島のニーズであ るように思えました。被災者の肩を揉んだら、みんな硬かった」と佐藤医師。
健康相談会といっしょに、八〇人分の餃子の炊き出しを行いました。ちょうど一一日に九〇歳の誕生日を迎えた被災者がおり、避難所の黒板には大きな字で「オメデトウ!」と書かれていました。
午後は避難所待機チームと地域訪問チームに分かれて行動。避難所待機チームは、相談者が来場するまで避難者の肩もみをしながら傾聴しました。地域訪問 チームは、島内一〇軒を個別訪問し血圧測定や健康相談を行いました。
桂島の仮設住宅は六月末に完成しました。被災者は仮設住宅に引っ越せる喜びの反面、「これからどのように生活していけばいいのか」と大きな不安を抱いています。
(民医連新聞 第1503号 2011年7月4日)