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民医連新聞

民医連新聞

やめよう原発 全国144カ所で統一行動

 六 月一一日に全国一四四カ所、海外一一カ国で「脱原発100万人アクション」が行われました。参加者はデモやコンサート、映画上映、講演会など多彩な企画で 「原発やめて、自然エネルギーを」とアピール。震災から三カ月の一一日に合わせた統一行動で、原発事故後、初の全国規模の運動です。この中から東京都新宿 区と群馬県前橋市の様子を紹介します。京都と長野は参加した民医連職員から写真を寄せてもらいました。

東京
飛び入り参加が多数

 午後二時、新宿中央公園。東京の主催者「素人の乱」の松本哉さんは「四月に高円寺、五月に渋谷でも脱原発のデモをした。原発の再稼働は、みっともない。みんなで社会を変えましょう」と呼びかけました。
 デモ参加者の中には“アキバ系”のコスプレやちんどん屋の仮装行列が。川柳で脱原発をアピールする人や、「カツオとワカメを守れ」と書いた大きなしゃも じ、「原発さよなライオン」のプラカードも。子ども連れの姿が目立ったのも特徴。多くの人から「子どもたちの未来のために、原発をなくしたい」との声を聞 きました。
 飛び入り参加も多く、最終的に二万人の隊列に。若者はヒップホップやロックを演奏する「サウンドカー」の周りに集まり、歩道まで人が溢れました。デモに 向かって沿道の高層ビルやバス、歩道橋から手を振って意思表示する人もいました。(矢作史考記者)

群馬
ベビーカーも行進

 「原発なくてもエエジャナイカ大行進」が、群馬県前橋市で行われました。出発 時は三〇〇人程度と思われた参加者数ですが、最終的には一〇〇〇人の大行進に。プラカードや横断幕を持ち寄り、ソーラーバッテリーでアンプを鳴らして歌い 続ける人など、それぞれが思いを込めたメッセージを発信。赤ちゃん連れの若いお母さんや、ベビーカーを押した夫婦も目立ちました。行進前には原子力資料情 報室の古川路明さんが「福島第一原発の放出放射能と日本の電力の将来」と題して講演しました。
 東京電力をはじめ、電力各社は発電所の総発電量と稼働率を公表していません。東電は原子力だけでなく、火力、水力など発電所の情報をホームページから削 除し、本当の発電量を隠しています。今夏に向け休止中の火力発電所の再開計画もありますが、これもなぜか発電量を明らかにしません。東電はまず計画停電 で、続いて電気料金値上げで原発必要論を広げようと躍起です。すべての情報を公開したうえで、国民の選択に委ねるべきではないでしょうか。(原田和宣、群 馬民医連・事務)

京都
若者たちがアピール

 個性的なプラカードを掲げて、200人の若者が参加した(京都民医連・浦ひろ子)

長野
外国人も参加

 外国人の姿もあった松本市のデモ(長野県民医連・窪田耕介)


上関原発建設反対のとりくみ

広島共立病院 青木克明医師

 全国では新たな原発建設を許さない住民運動が、民医連もかか わって盛んに行われています。このうち、山口県上関(かみのせき)町に計画中の上関原発は、瀬戸内海を埋め立てて二基の原子炉を造る予定で、対岸の祝島島 民らが反対しています。広島共立病院医師で、「上関原発止めよう広島ネットワーク」共同代表の青木克明さんに、この間のとりくみを報告してもらいました。

 原発は二酸化炭素が出ない地球温暖化対策の“エース”と宣伝され、政府は輸出も計画しましたが、「想定外」の大地震による未曾有の事故が起こりました。環境汚染、内部被曝の影響は予測がつきません。
 放射性廃棄物の最終処理場は、決まっていません。原発のある国は、国際社会から核兵器の潜在保有国と見られます。莫大な建設費用がかかり、発電コストは 太陽光発電に逆転されました。発生したエネルギーの三分の二を温排水として海に捨てており、効率のよいエネルギーとはいえません。
 中国電力(本社・広島市)は二九年前から上関町に原発建設を計画、いよいよ埋め立て工事を始めようとしています。この地は昔ながらの瀬戸内海の良さが 残っており、予定地に対面する祝島の島民は、豊かな自然と共存して漁業を糧に暮らしてきました。島民は原発反対で結束しているにもかかわらず、中電は多額 の寄付などで町議会を懐柔、住民合意が得られたとして計画を進めてきました。
 予定地周辺は生物多様性のホットスポットである一方、多くの活断層があります。広島市からわずか八〇キロ、多量の温排水がカキの養殖などに影響を及ぼす ことも危惧されます。原発建設には最も不適切な場所で、地元住民のみならず豊かな自然を守りたい科学者、海の愛好家らが反対運動に立ち上がっています。
 「被爆地ヒロシマの近くに新たな核施設はいらない」と、昨年一月に上関原発止めよう広島ネットワークが三五団体で結成されました。ネットワークには、広 島医療生協や同生協原爆被害者の会が広島県保険医協会と共に参加しています。中電と中国経済産業局への申し入れや中電本社前のハンスト支援、街頭宣伝、講 演会、英字新聞への意見広告などを実施。震災直後には中電に島根原発の運転停止と上関原発建設計画の即時凍結を求めました。また、広島市長選では候補者に 原発の是非を問うアンケートも行いました。
 中電は山口県の要請で工事を一時中断していますが、周辺自治体の議会からは計画の中止、凍結を求める決議が次つぎに挙がっています。人類と地球の未来の ために原発から手を引き、自然エネルギーの活用をめざすべきです。今後も地元住民を支援し、上関原発建設阻止のために行動します。

被曝する原発労働者

―東京のシンポで実態告発

 福島第一原発事故の復旧作業で、作業員九人が二 五〇ミリシーベルト超の被曝をしていました。四〇年以上前から過酷な現場で働いてきた原発労働者ですが、事故前はその姿にあまり光が当たりませんでした。 六月四日に東京で行われたシンポジウム「そこで働いているのは誰か―原発における被曝労働の実態」で、被曝の危険にさらされる原発労働者の生々しい実態 と、労働現場の差別構造が明らかにされました。(新井健治記者)

 シンポジストは三八年間、原発労働者を追ってきた写真家の樋口健二さん、北朝鮮拉致被害者家族で元東京電力社員の蓮池透さん、週刊『東洋経済』記者の風間直樹さんの三人。
 原発はコンピューターで制御されている、と思われがちです。ところが、今回の復旧作業に限らず、これまでも年に一度の定期検査では、床やパイプに付いた 放射性物質の拭き取り、パイプのひび割れ箇所の溶接、放射能スラッジタンクの掃除などはすべて労働者の手作業でした。
 全国の原発で働く東電社員は一万人ですが、下請け労働者は七万五〇〇〇人。東電社員は監視するだけで、原発内で危険な作業に従事するのは下請け労働者で す。その多くは臨時雇用で、七次、八次の“孫請け”はざら。雇用契約書も社会保険加入もありません。樋口さんは「原発はもともと、被差別部落民、農漁業 者、失業者ら底辺労働者を使い捨てる差別構造の上に成り立ってきた」と指摘します。
 風間記者はハローワークにあった福島第一原発の求人票を示しました。そこには日給九〇〇〇~一万一〇〇〇円、学歴・年齢・経験不問、とあります。「これ は下請け労働者に直接指揮命令する偽装請負で、明らかな違法行為。安全教育はほとんどなく、健康診断や採用面接がない例も多い」と指摘します。東電は一人 七万円の日当を出しており、下請けの過程で多額の現金がピンハネされています。
 一九七七年から二〇〇九年まで東電で働いた蓮池さんは、福島第一原発の安全管理も担当しました。「東電社員として、下請け労働者の被曝の事実を知らな かったわけではない。東電でも『新入社員を鍛える』と称し、放射線量が高い場所に連れていくことがあった。東電内では、原発事故が起きる確率は一〇〇万~ 一〇〇〇万年に一度と言われ続けてきた」と明かします。
 五次下請けの原発労働者の生の声も紹介。「片づけやゴミ処理をしていた。一万円以上もらえる仕事は他にないので、仕方がなかった」と言います。
 過去三五年間で、がんを発症した原発労働者の労災は一〇件が認められただけ。多くは申請すらしていません。労災を申請した労働者の中には、年間被曝線量 の上限基準(五〇ミリシーベルト)以下の人もいました。ところが、今回の復旧作業で、この限度は一気に二五〇ミリシーベルトまで引き上げられました。
 樋口さんは「二五〇ミリシーベルトは殺人行為に等しい。過去の原発労働で既に五〇万人以上が被曝したが、復旧作業で日々、大量の被曝者が生まれている。 私たちは、そのことを忘れてはいけない」と訴えました。

(民医連新聞 第1503号 2011年7月4日)