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民医連新聞

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化学物質アスベスト 二次被害を防ぐ課題は 働くもののいのちと健康を守る全国センターが被災地調査 全国センター事務局次長 岡村やよい

 被 災地では、アスベストや化学薬品などの物質が流出し、住民や作業者などへ二次被害が懸念されています。働くもののいのちと健康を守る全国センターでは、六 月三~四日、被災地の安全衛生の課題を把握する目的の現地調査を行いました。宮城県多賀城市・石巻市を中心に、がれき集積場や工場街、水産加工団地の視 察、塩釜保健所、坂総合病院との懇談などを実施。震災から八〇日が過ぎた時点での課題を報告します。

■学校・公共施設脇にがれき置き場が

 今回の被災で出たがれきの量を宮城県は一六〇〇万トンと推計。現在三三市町村一一三カ所のがれき仮置き場が設置されています。
 仮置き場の一つ、多賀城市・中央公園は、野球場やバラ園もあり、本来は市民の憩いの場です。グランド横に積まれたがれきは膨大でした。大まかに分類し、 重機でカサを減らして積み上げる程度の作業です。
 石巻市のがれき仮置き場は、石巻商業高校と石巻専修大学に接する空き地でした。がれきの運搬車がひっきりなしに通り、ひどい粉塵と、一帯に漂うゴミの臭いが気になりました。
 重機作業者の多くは防塵マスクを着けていましたが、周辺の作業者やがれきを運ぶ人の多くがマスク未着用でした。塀一枚へだてた高校の運動場では、生徒たちがサッカーをしていました。
 隣接地では仮設住宅の建設も進行中でした。この環境で住む人がいるだろうかと思わず考えました。

■処理・解体作業による地域汚染

 宮城県のがれき処理はまだ一割程度といわれています。建物の解体は六月から本 格化します。環境省が行うアスベスト調査は各市町村ごと一カ所で、とても汚染の実態をつかめません。厚労省が五月に行った調査では、実施した三カ所すべて でアスベストが確認されたとの報道もあります。作業者、住民、ボランティアへの注意喚起が必要です。
 坂総合病院との懇談では、患者や共同組織への周知を提起しました。当センターでは、テレビや新聞などを使って大規模な宣伝をするよう、厚労省にも要請し ました。仮置き場から二次集積場に大量のがれきを動かす際の環境汚染も大きな問題です。

■流出した化学物質知らずに被害も

 多賀城市・石巻市沿岸部は工場地帯でもあります。石油コンビナート、化学工 場、火力発電所など、アスベストやトルエン、ダイオキシン類などを使用していた工場の多くが津波に遭っていました。県中部の沿岸部では、ヒ素など三種類の 有害物質が、最大で国基準の二・二倍検出されています(神戸大学調査)。
 「津波は真っ黒だった」と多賀城市で話す人がいました。石油コンビナートの重油が流出した影響と見られます。津波後のヘドロには、さまざまな有害物質が 混入している危険性があります。ヘドロ処理で手が化膿した人も出ていました。坂総合病院の矢崎とも子医師からは「『背中が濡れる』と訴える被災者を診たら 化学熱傷だった。緊急入院になった」との報告もありました。

■水産加工場・漁港の労働実態

 石巻漁港周辺の水産加工場も壊滅的な被害を受けていました。工場は津波にのまれ、アスベストの飛散が心配されます。また、腐敗臭がたちこめ、ハエも大量発生していました。
 港の一角にカモメが群れており、その下では腐った魚を海洋投棄するための作業がされていました。付近の電気が復旧せず、作業は朝四時から。水道も止まっ たままで、汚れを洗い流すこともできない状態です。腐敗した魚に撒いた石灰でかぶれたという話も聞きました。

■阪神・淡路の教訓を生かして

 阪神・淡路大震災では、アスベスト対策が遅れ、住民やボランティアに情報が周知徹底されませんでした。当時、解体に従事した業者二人がすでに中皮腫で死亡しています。中皮腫は曝露から十数年後に発症します。本格的な発生はこれからです。
 アスベストに限らず、復興をすすめる上で、危険(安全)にかかわる正確な情報提供、長期的な二次災害防止のとりくみが求められています。四月末までに、 復旧作業に関わる労働災害の死傷者は一二〇人(うち死亡九人)となっています。被災地では働く人の安全確保が、地域の生活環境を守ることと一体の課題で す。当センターでも調査結果をまとめ、国・県への要請を強めていく予定です。

(民医連新聞 第1503号 2011年7月4日)