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民医連新聞

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相談室日誌 連載330 猛暑の中つながった 脱水症の夫婦は―― 河野千代子(東京)

 Aさんは認知症と精神疾患をもつ八〇代の女性です。脳梗塞で左片麻痺の夫(八〇代)と二人暮らし。自宅の二階には次女夫婦が同居していましたが、夫が関わりを拒否していました。
 Aさんは嫁ぎ先の農業を手伝いながら三人の子どもを育てました。子どもたちがそれぞれ家庭を築いてからは、夫婦二人だけの生活に。
 昨年夏の猛暑日、Aさん担当のケアマネージャーから「二人が脱水症状で、医療機関で治療を受けている」と当センターへ連絡がありました。脱水の原因は夫 が換気やクーラーの使用を拒むためでした。Aさん自身は認知症で体調の不具合を訴えることができません。担当ケアマネージャーはこのままだと危険と判断 し、介護保険外で宿泊サービスがあるデイサービスに避難させました。後日、当センターの職員がAさん宅を訪問すると、室内は蒸し暑く、食事がその暑い部屋 に不衛生な状態で放置されていました。夫はAさんがいつでも食べられるようにと考えていたようです。
 当センターとケアマネージャー、ヘルパー事業所は、ヘルパーの生活支援を継続するほか、体調管理に訪問看護の利用を勧めました。しかし、夫は新たなサー ビスの利用は望まず、ヘルパーだけを継続することにしました。
 夫は一人で認知症のAさんを、最期まで看るつもりでいました。しかし、理解力が低下し、片麻痺もある夫が一人で介護できる状態ではありませんでした。加 えて夫がAさんに手をあげていたこともわかりました。
 「虐待」と認定した行政の介入で、Aさんは精神科の病院へ入院しました。夫の介入拒否で関わることができなかった同居の次女夫婦も入院手続きなどで、協 力できるようになりました。Aさんは現在も入院中です。
 今回のケースでは行政の介入まで、支援者も夫に振り回されるなどの困難がありました。その後、民生委員や地域住民も気にかけていた世帯だったことも判 明。現在、夫はヘルパーのサービスも拒否している状態です。今後、家族や民生委員、住民、ケアマネージャーなどといっしょに支援していくことにしていま す。

(民医連新聞 第1503号 2011年7月4日)