支援活動の節目にあたって 全日本民医連 藤末会長に聞く 「10年単位」の復興が始まった求められるのは住民本位の視点
大震災発生以降、全国の民医連から入っていた被災地への支援は、五月いっぱいで一段落。六月からは現地の仲間たちが復興の課題にとりくんでいきます。支援活動の節目に、私たちに今後必要な視点は? 全日本民医連の藤末衛会長に聞きました。(新井健治記者)
改めて全日本民医連の支援活動をふり返ると、被災者の生活に寄り添い、迅速できめ細かく活動しました。心のケアにも通じる医療・介護支援に大規模にとりくめたと思います。
また、原発事故に関しては、緊急被曝事故対策本部が、現地調査や住民の不安にこたえる学習会にとりくむなどで動いてきました。
六月以降は被災者が避難所から仮設住宅へ生活の場を移す時期です。支援内容も、避難所を出た人の生活再建の支援になります。仮設での生活は阪神大震災では、五年間かかりました。
阪神大震災の発生当時、地域の高齢化率は一六%でしたが、仮設住宅では三〇%を超えました。東日本大震災で被害が甚大だった地域は、もともと高齢化率が 三割超。仮設では、高齢化率は五割を超えるのではないでしょうか。高齢者・障がい者を孤独にしない視点が重要です。
また被災地はもともと過疎地が多く、ここ一〇年の構造改革の矛盾が直撃し、疲弊していた地域です。そこを震災が襲いました。医療・介護にとどまらず、生 活・生業まるごと支援する総合的な視点が必要です。
支援内容の視野を広げるとともに、長い時間軸の視点も必要。阪神大震災の復興政策の検証は一〇年たって始まり、一五年目で「人よりモノの復興だった」 と、一定の結論が出ました。いまから一〇年単位で被災者の生活復興を支援する構えと実践が求められています。
■阪神大震災との違い
一六年前、当時の首相は国会で堂々と「日本は私有財産の国、被災者に個人補償はできない」と答弁しました。いまの政府は、同じことは言えません。
また今回は行政、病院団体だけでなく日本医師会やプライマリ・ケア連合学会などと連携しながら支援ができたことも特徴です。
阪神大震災ではコミュニティーを無視した仮設住宅への入居政策で、多くの孤独死がありました。しかし今回は「孤独死を出さない」という意識は行政や医療者などに浸透しています。
このように、今回の震災対応は阪神大震災に比べれば一定の前進はあります。
■復興口実にした企み
一方、復興には新しい困難があります。財界の中には震災をテコに、構造改革を加速させる動きもあります。こうした企みに根拠ある対抗軸を形成するためにも、住民本位の復興をめざした「提言」が必要です。
八月の第三回評議員会をめどに、復興を意識した医療・介護制度の再生計画「全日本民医連の提言(仮)」をまとめます。もともと今期は〇八年発表の「全日 本民医連の医療・介護制度再生プラン」を改訂予定でした。
■全国で
被災地の支援から帰任した職員を中心に、「もし、同じような大規模災害が起こったら」と考え、自身の事業所の危機管理体制を見直しましょう。
また、福島の原発事故をきっかけに、全国で原発問題の学習を積極的に行い、再生可能エネルギーへの転換を求める国民的運動をすすめましょう。今後は震災支援を日常の活動に位置づけてほしい、と思います。
(民医連新聞 第1501号 2011年6月6日)