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民医連新聞

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フォーカス 私たちの実践 被災体験から見えた課題 青森・八戸医療生活協同組合 被災時の動き振り返り緊急時対策の改善へ

 八戸医療生協では東日本大震災の被災体験から、災害発生時の対応を見直しています。同法人には診療所など八事業所があり、地震発 生直後に、各事業所はどう動いたか? 不足していた点は何か? と課題を整理し、振り返りました。四月二四日の八戸医療生協の全職員大会から報告します。 (矢作史考記者)

3月11日、どう動いたか

八戸医療生協の事業所

診療所1
訪問看護ステーション1
通所リハビリテーション1
認知症対応型デイサービス1
小規模多機能ホーム1
居宅介護支援事業所2
ヘルパーステーション1

 八戸市の震度は五強。市内は多くの地域が停電になり、電話不通にも陥りました。まず地震直後の事業所の対応を振り返りました。
 八戸生協診療所…電子カルテが使えなくなり、物が散乱。停電で開かなくなった自動ドアを開放しながら、外来診療を続けました。手書きで処方箋を出して、できる限りの診療を行いました。
 生協居宅介護支援事業所…法人内・外の事業所が休止し、利用者の対応に苦慮しました。とくに独居の利用者のショートステイがすべてキャンセルになり、ケアマネはその対応に追われました。
 医療依存度の高い利用者が多く、同法人の訪問看護ステーションと共同で安否確認をしました。訪問看護ステーションと重複して訪問するケースもありました。
 生協ヘルパーステーション…安否確認と同時に、独自の判断で介護が困難な利用者宅に訪問時間を早めてサービスに入りました。
 生協訪問看護ステーション虹…管理中の六五人の患者のうち、独居や重度など一番気になる一五人の安否確認をしました。その中には、人工呼吸器管理の患者が、救急搬送されたケースもありました。
 生協小規模多機能ホーム「みなみるいけの家」… 認知症の利用者が多い施設です。日ごろから避難訓練を実施していましたが、震災時は外出で博物館の見学中でした。「建物から出る。外に行く」とパニックに なった利用者を必死に抱きしめ、落ち着くよう声かけをしました。歩行が不安定な利用者には座るよう声をかけましたが、恐怖ですぐに立ち上がってしまいまし た。利用者を壁に押しつけるようにして転倒を防ぎました。
 職員はみな、患者や利用者の安全優先で行動ができていました。

緊急事態での今後の対応

 全事業所は、災害時マニュアルを備えています。しかし、当日の行動を振り返る中、ヒヤリとした点や課題が明らかになりました。
 まずは利用者の安否確認の課題です。停電時にフォローが必要な利用者の対応に苦慮しました。人工呼吸器や在宅酸素、吸引器、透析、電動ベッドなどを使用 している利用者を速やかに把握する必要があり、そのためフォローの必要な利用者リストを作成しました。
 また、ほかの事業所とフォローが重複しなくてすむよう、独居の利用者は居宅介護支援事業所、医療依存度が高い利用者は訪問看護ステーションがあたる、という法人内のルールを作りました。
 次に職員の安全確保の問題です。利用者の安否確認で信号機が停止した道路を走り、また大津波警報で避難命令が出ている地域と知らずに利用者宅に向かい、二次被害の危険性があったことが分かりました。
 情報収集と連絡手段の確保のために携帯ラジオとトランシーバーの準備が必要でした。職員連絡網に電話番号のほか、メールアドレスを登録する提案もされま した。また、水や懐中電灯、電池確保、自家発電装置の設置の検討も意見にあがりました。
 今後これらの意見を参考にしながら、マニュアルを改善する予定です。また、震度五以上、あるいは大火災が起きた場合は役職者が全員集合し、対策本部(理 事長を本部長とする)を設置することがすでに決まっています。

民医連の存在価値を再確認

 八戸市は高齢化がすすんでいる地域です。今回の大震災の経験の中で、八戸地域における民医連の存在価値も再確認されました。
 本震翌日に診療所近くの住民が「一人だと怖い」とやって来ました。地震直後に稼働していたヘルパーステーションは民医連の事業所だけでした。ヘルパーた ちが行った安否確認は民医連外の法人のケアマネから感謝されました。
 避難地域に一時いた職員からは「避難所の体育館は床が冷たく、高齢者には厳しい環境だった。そのことを考えれば、今後民医連として暖かい寝床を提供でき れば」「今後もっとひどい震災が起きたときには、地域の人や組合員に民医連の事業所を開放し、炊き出しを行ったり、避難所として使えるようにしたい」との 意見も。また、「全日本民医連がいち早く支援に動いていたことを知り、自分たちにはできなかったことだったのでホッとした。討論を通じて『患者・利用者さ んを断らない』『無差別平等』は民医連の真髄だと実感した」との意見も出ました。

(民医連新聞 第1500号 2011年5月23日)