シンポジウム 原発・核兵器 私たちの未来(2) 経済的にも破綻した原発 再生可能エネルギーへ転換を 吉井英勝衆院議員の発言(下)
前号に引き続き、シンポジウムから吉井議員の発言です。
原発はこれまで火力発電や水力発電に比べて「効率の良いエネルギー」と言われ てきました。単純に一キロワット当たりの発電コストを比較するだけなら、確かに原発は安価です。ところが、いったん事故が起きれば、途方もないコストがか かることが今回の事故ではっきりしました。
農業、漁業、観光業をはじめ、放射能汚染で操業できなくなったあらゆる事業者への補償、避難を強いられた住民への補償、風評被害を含めれば、合計でいっ たいいくらかかるのか。すべてをきちんと補償すれば国家予算並みになります。
事故の収束には、数十~数百年単位かかります。チェルノブイリ原発は事故から二五年たった今も、廃炉のために多くの人が働いています。この作業は一円も 利益を生み出さず、その人件費は莫大です。原発そのものの是非を抜きにしても、原発は決して経済的ではないことは明らかです。
キーワードは「地産地消」
原発は日本の電力の三割を担っています。日本のすべての原発を今すぐ止めることはできませんが、原発から脱するために、早急に再生可能エネルギーへの転換を始めるべきです。
再生可能エネルギーとは二酸化炭素が発生せず、かつ安全なエネルギーのことで、太陽光や風力、バイオマス、小規模水力などがあります。私がこの中で注目するのが太陽光発電です。
太陽エネルギーは莫大です。地球にある埋蔵ウランを全部燃やしたと仮定しても、その熱量の五百倍のエネルギーがあります。
たとえば、一〇〇〇平方キロメートルの土地に太陽光発電の装置を設置した場合、得られる電力は年間一〇〇〇億キロワット。これは柏崎刈羽原発一~七号機が一年間に発電する電力量の二倍です。
一〇〇〇平方キロメートルは在日米軍基地の面積とほぼ同じ。基地を撤去して太陽光発電装置を設置すれば、こんなにいいことはありません。
日本は年間で九〇〇〇億キロワットの電力を使っています。今すぐ、そのすべてを再生可能エネルギーで賄(まかな)うことはできませんが、少なくとも原発 に頼らない道はあります。大切なのは国の政策として再生可能エネルギーに舵を切り、原発にかけている国家予算を切り替えることです。
今後のエネルギー政策のキーワードは、「地産地消」の電力生産です。今は東京電力をはじめ大手電力会社の「地域独占」「利潤追求」型です。それを過疎地 から都市部まで、地域の実情に見合ったスタイルに変えていくべきです。
日本の複雑で豊かな自然を生かしたエネルギー生産は、地産地消型が最も適しています。また、装置の生産や設置工事によって地域の中小企業の仕事を創造することにもつながります。
太陽光発電の可能性
独立行政法人「新エネルギー産業技術総合開発機構」は、日本国内の建物や空き 地に太陽電池を設置すれば、2030年には最大2億キロワットの発電が可能と計算しています。また、5月10日に行われた、「国連の気候変動に関する政府 間パネル」(IPCC)は、太陽光や風力などの再生可能エネルギーで、2050年には世界のエネルギー需要の最大77%を満たすことができると発表しまし た。
(民医連新聞 第1500号 2011年5月23日)
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