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民医連新聞

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シンポジウム 原発・核兵器 私たちの未来(1) 2つの「人災」が 引き起こした事故 吉井英勝衆院議員の発言(上)

 福島原発事故はなぜ起きたのか? 原発に頼らずに電力は賄えるのか? 東日本大震災から1カ月の4月11日、東京でシンポジウム「原発・核兵器・私たちの未来」が行われました。原水爆禁止日本協議会の主催。シンポの発言要旨を3回に分けて紹介します。
(新井健治記者)

 事故は決して「想定外」の出来事ではありません。「天災」ではなく「人災」、それも二つの人災が重なって起こりました。

再三の国会質問にも

 私は国会で「大規模な震災で原発の外部電源と内部電源が止まれば、炉心溶融など重大な事故が起きる」と、再三指摘してきました。
 指摘が一回だけなら政府や東電の理解が及ばないこともありえます。しかし、私は二〇〇〇年以降だけでも、国会質問や質問主意書で八回にわたって原発の危 険性を追及。直近では昨年五月の衆院経済産業委員会で取り上げました。それでも、政府や原子力安全・保安院は「幾重にも安全策をとっているから大丈夫」と 聞く耳をもちませんでした。
 もう一つの人災は、震災直後の東電と政府の対応の遅れです。地震の一時間後に、保安院は原発の全電源喪失による炉心溶融の可能性を認め、政府にも伝わっ ていました。早い段階で深刻な事態になるのは分かっていたのに、東電は炉心を冷やす海水注入を躊躇しました。海水を入れれば、廃炉にせざるをえない。東電 は事ここに及んでも廃炉にしたくなかった。なぜなら、福島第一原発は既に減価償却を済ませており、運転すればするほど利益があがる“ドル箱”だったからで す。
 企業が動かなければ、原子炉等規制法に基づき、政府が海水注入を命令すべきだった。ところが、政府も強く要請しなかった結果、海水注入開始は三月一二日 午後八時二〇分。地震発生の一一日午後二時四六分から、実に三〇時間近くが経っていた。経営判断を優先した初動の遅れが、炉心溶融につながったのです。
 私の国会質問が話題になり、米国、フランスなど海外メディアから取材が相次いでいます。記者は「なぜ、東電や政府は本当のことを言わないのか」と一様に 驚きます。隠(いん)蔽(ぺい)体質には理由があります。

「原発利益共同体」が招いた隠蔽体質

 原発一基は三〇〇〇~五〇〇〇億円で、東芝、日立、三菱重工などが製造しています。これとは別に建て屋など付属施設はゼネコンが請け負います。原発一基 を造るだけで一〇年はかかるため、資金調達で銀行も潤う。こうした原発関連の大手企業は、政治家に献金や選挙協力などさまざまな形で利益を還元してきまし た。まさに“原発利益共同体”です。
 共同体は企業と政治家にとどまりません。政府は原発立地の自治体に、一〇〇〇億円以上の多額の交付金を支給してきました。たとえば、柏崎刈羽原発のある 柏崎市は、この交付金を使って六二億円もの生涯学習センターを建てました。財政難の自治体は交付金で“原発麻薬患者”のようになり、二基、三基とつくるよ うに誘導されてきました。また、原発推進行政を担当する経済産業省幹部は、歴代、東電の副社長に天下りしています。原発を中心に“うまい汁”を吸ってきた 共同体は、その事実を隠すことに躍起になります。そこから隠蔽体質が生まれてきました。

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(民医連新聞 第1499号 2011年5月2日)