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民医連新聞

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国保 再生のために (5)滞納への制裁強化 急増する差し押さえ 「こんな取り立て 税務署でもしない」 大阪市

 国民健康保険料(税)の滞納世帯に対する「差し押さえ」が急増しています。正規保険証の取りあげと並ぶ、滞納者への「制裁」です。二〇〇九年度の差し押さえ件数は全国で一八万世帯を超え、〇六年度の二倍に(表)。なかでもこの傾向が際立つのが大阪市です。

 大阪市で鉄工所を営むHさんはここ数年経営不振で、国保料が完納できていません。
 国保課で事情を話し、相談しながら分納してきました。ところが年末、大阪市が、「これまでの国保料滞納分四〇万円を一週間以内に一括払いせよ」という通 知を送りつけてきました。問い合わせても「とにかく払え」の一点張り。市はHさんの口座を調べ、保証協会から借り入れた事業の運転資金を「財産」とみなし たのでした。
 「運転資金を押さえられたら仕事も収入も失う。税務署でもここまでしない」とHさん。

悪質滞納者でないのに

shinbun_1498_02 Hさんのような話は大阪市では珍しくありません。二〇一〇年度四月~一月末までに、滞納世帯の約四割にあたる五万四六二七世帯に財産調査が行われました。
 「差押予告」は分納を滞らせたことのない世帯にも届いています。「保険証は命綱。なんとか支払ってきたが、悪質滞納者のような扱いに震えた」という患者さんも。
 差し押さえはこれまでもありましたが、一〇年度は一月末の時点で四四六件、〇五年度五五件の八倍と急増中。不動産や預金だけでなく、学資保険一〇三件も 含まれています。大阪社保協が一月末にとりくんだ「国保110番」でも、相談の一五%が差し押さえ問題でした。

背景に「広域化」

 大阪社保協事務局長の寺内順子さんは、背景に国民健康保険の広域化に向けた準備が反映している、と指摘します。「他の自治体国保との合併前に身をきれいにしておきたい=累積赤字を一円でも減らしたい、という意向です」。
 制裁強化で国保財政の赤字は解決するのでしょうか? 寺内さんの回答は明快。「大阪市より先に差し押さえを強化した自治体の例をみても、この効果が最初 だけだと分かっています。差し押さえ通知に驚いてお金をかき集めて払っても、続くものではありません。まず払える保険料にするのが先」。
 大阪市では四〇代夫婦に子ども二人の世帯の年間保険料が、所得二〇〇万円で三八万円、同三〇〇万円では五〇万円超。納期が一カ月滞った場合は一四・六%の延滞金も加算されます。
 「国税徴収上は適法かもしれないが、国保法上は誤っている。住民の命を守る自治体の責務からみて、おかしいやろ? という世論をつくりたい」(寺内さん)
 学資保険の差し押さえについては、「子どもの未来まで奪うのか?」と運動し、三月に平松邦夫大阪市長が「見直し」を表明しました。(木下直子記者)

(民医連新聞 第1498号 2011年4月18日)

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