避難者への診療姿勢 肥田舜太郎医師 寄り添い、励ましを
全日本民医連顧問の肥田舜太郎医師に、原発事故避難者に対する診療姿勢について話を聞きました。肥田さんは広島で原爆に被爆、戦後、一万人以上の被爆者を診療し相談にのってきました。
原発事故から逃れてきた避難者の診療は絶対に断ってはいけません。肉親のつもりで心配し、親切に接することが大切です。
原爆被爆者は戦後、一貫して差別を受けてきました。同じような事態が今後、原発避難者の身の上に起こらないとも限りません。そういう時こそ、民医連の出 番ではないでしょうか。避難者を励まし、差別には断固とした態度で臨むべきです。
大量の放射性物質を一瞬にして広範囲にまき散らしたのが原爆です。原爆被爆者は身体に放射性物質が付着していた可能性がありましたが、原発から出る放射 性物質は原爆に比べれば少なく、避難者をトリアージする必要はありません。「被曝がうつる」などといった妄言は、きっぱり否定すべきです。
ただ、内部被曝がこれから先、どのような形で身体に影響を与えるかはわかりません。「ぶらぶら病」といわれたように、原爆被爆者には病名こそつかないも のの、本人は「だるくて仕方がない」という症状がありました。全国の高名な医師に診てもらったものの診断がつかず、最後に私のところにたどり着いた被爆者 が大勢います。
たとえ治療が難しくても、患者が生きていくことを一生懸命に援助したことで、被爆者は私を信頼してくれました。きちんと健康管理をすれば、原爆被爆者で も八〇歳、九〇歳まで長生きする人もいます。避難者にも「ずっと援助をするから、自信をもって」と、ともに生きる姿勢を示すべきです。
被曝の不安におびえる患者には、今後のためにも検査結果や原発事故後の行動記録を残しておくようにすすめることも検討すべきです。また、将来は健康診断などで、異常を早期に発見するようにしましょう。
■肥田医師のインタビューと福島現地調査の様子が全日本民医連のホームページ「東日本大震災・動画ニュース」で視聴できます。
(民医連新聞 第1498号 2011年4月18日)