相談室日誌 連載324 国保法44条、外来にも適用を 岡 奈津子(奈良)
Aさん(六〇代・男性)は慢性閉塞性肺疾患で在宅酸素療法を導入しましたが、医療費の支払いが困難なため、看護師の紹介で相談に来ました。Aさんは内妻 と二人暮らし。露店のアルバイトをしていましたが、呼吸苦がひどく仕事ができなくなりました。六〇代の妻も仕事が見つからず、Aさん夫婦は兄から数万円の 援助を受けて生活しています。
話を聞き、問題は医療費だけでないと思い生活保護申請の話をしました。しかし、「あんなかっこ悪いもん受けたくない、医療費だけ何とかしてくれたら生活 できる」とあくまでも医療費の軽減を希望したので、国民健康保険法四四条の申請をすることにしました。
国保法四四条は「特別の理由がある被保険者」が医療費の「一部負担金を支払うことが困難である」場合、「減額や免除」すると決めています。この制度には 従来、国の財政支援はなかったのですが、昨年、国が減免額の半分を補てんすることになりました。しかし、厚生労働省の通知によれば、対象は入院療養に限ら れ、外来治療は対象外。また、適用は各自治体の判断に委ねられています。
当院のある市には制度の要綱がなく、この数年間、適用件数はゼロでした。Aさんが申請に行った後、市から相談室に、「生活保護の紹介はしなかったのか。 四月からは対象を入院に限るので、認められても三月まで」との連絡が入りました。市の担当者の話によると、四月末以降に出される要綱では「対象を入院に限 る」というのです。
国民健康保険は憲法二五条にもとづき、国が国民に対して責任をもつ“社会保障”です。国民が安心して医療を受けられるよう保障すべき制度において、減免 の対象を入院費と外来費で区別することは、あってはならないと思います。
Aさんの申請は認められ、三月まで窓口負担は免除されることになりました。しかし、Aさんの医療費負担はこれからも続きます。「生活保護を受けたくな い」というAさんの思いも大切にしながら、治療が中断しないよう相談を継続しています。
国保法四四条が入院・外来を問わず必要な人に適用され、受診が保障されるよう、制度の対象拡大を求めて運動していく予定です。
(民医連新聞 第1497号 2011年4月4日)