フォーカス 私たちの実践 重症心身障害児の現状調査 静岡・訪問看護ステーションあすなろ 利用できるサービス少ない 親の休息などサポート必要
訪問看護ステーションあすなろ(静岡県浜松市)では、二〇〇七年から重症心身障害児の訪問看護を実施し、現在三人を受けもってい ます。患児の親から「レスパイト入院の受け入れを断られて困っている」と相談されたことから、市内の重症心身障害児に対するサービスの現状を調査し、問題 点と対策の方向をまとめました。第一〇回看護介護活動研究交流集会で、看護師の菅谷香さんが報告しました。
患児の保護者から、レスパイト入院先がないことの不安を訴えられたのは二〇〇九年秋でした。訪問看護でサポートする一方、これを機に市内の在宅重症心身障害児の現状をつかみ、問題や行政との連携を考えることにしました。
調査方法は、(1)圏内の訪問看護ステーションにアンケートで、重症心身障害児への訪問の実施状況を聞く、(2)浜松市の社会福祉部障害課から現状と政 策を聞く、(3)当ステーションを利用中の二家族にアンケートを頼む、の三つです。
「重度障害児に対応可」半数
二二訪問看護ステーションのうち一八から回答があり、その結果、重症心身障害児の受け入れが可能な事業所は半数以下でした。できない理由は、(1)スタッフの不足、(2)小児看護や人工呼吸器の知識・経験不足による不安、などでした。
どうしたら受け入れ可能かという質問には、(1)医師との連携、(2)研修の実施、(3)コーディネーターや相談窓口の設置、などのサポートがあがっていました。
行政担当者への聴き取りでは、在宅心身障害児の数を正確に把握していないことがわかりました。在宅に約二〇人、多くは施設や病院にいるのでは? という 話でした。吸痰などができる介護事業所も未掌握。また「レスパイト入院が受けてもらえない」という苦情は、行政に届いていませんでした。受け入れ施設の情 報は、A病院は空床がある場合だけで定期的利用は不可、B病院は自費で一泊一万円という説明でした。対応策を聞くと、「減って困っているとの苦情はない。 福祉施設では対応が困難で、医療機関での対応が相当。成人のレスパイト入院は可能なので、今後は可能になるかもしれない」との認識でした。
家族の頼みは訪問看護だが…
四歳のCちゃんと三歳のDちゃんのお母さんが調査に答えてくれました。「緊急 時、休息、兄弟の学校行事に出る時間のためにショートステイを拡充してほしい。(訪問看護の)二時間でしか外出できず大変」「自由に外に出られないのが不 便でしたが慣れました。気切しているので首の血管が切れた時…それが恐いです」。在宅介護は一年半と二年です。
訪問看護に対する要望では、(1)利用時間の延長・回数の増、(2)退院・外出支援でした。利用したいサービスには訪問入浴もあがりました。コーディネーターや患者会も求めています。
重症心身障害児は自立支援サービスを利用できるはずですが、実際は人工呼吸器を装着している障害児にサービス提供できる事業者は皆無に等しいのが実態で す。痰の吸引が介護ヘルパーに「解禁」されても普及していません。
結局、医療行為が必要な患児は、家族が対応するか、訪問看護を依頼するしかありません。
訪問看護師の連携と研修を
行政にレスパイトの苦情が届いていない理由は、重症心身障害児の相談に総合的に対応する行政機関が不明確なためと思えます。本来は、医療・福祉の現場と行政が連携して支援する体制が必要です。現状では保健師と連携を強めることが適切と考えられました。
私たちにできることは、ほかのステーションと連携を取り合い、訪問看護師の研修などの機会をつくり、小児看護や人工呼吸器の知識を普及・共有することだ と考えられました。機会あるごとに他ステーションに働きかけ、ケアの質向上と受け入れ先の確保をめざし、家族の負担軽減と支援につなげていきたいと思いま す。
(民医連新聞 第1494号 2011年2月21日)