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民医連新聞

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新防衛大綱の危険性 「動的」に自衛隊を海外に?

 民主党政権のもとで日本の外交・安全保障政策は、きわめて危険な方向にすすみつつあります。昨年一二月一七日に閣議決定された 「新防衛計画大綱」と「中期防衛力整備計画」は、いままでの防衛計画を超える危険性をもつものです。日本平和委員会が開いた緊急学習会でその問題点が明ら かになりました。

「動的防衛力」とは

 「新防衛計画大綱」には新たな基本方針として「動的防衛力」が盛り込まれました。これまでの「専守防衛」政策を転換させるもので、最大の問題点です。
 「動的防衛力」とは、これまで全国に均等に配備していた自衛隊の部隊を、「不安定要因」から生ずる「各種事態」を想定して、重点配置することです。しか も、具体的な脅威ではなく「不安定性」を脅威とみなすのです。つまり、地球規模のどこでも、「不安定」なところに米軍とともに軍事活動を展開することが 「動的防衛力」とされています。
 これまでの政府は、「専守防衛」という言葉で日本の自衛隊を正当化してきました。日本は憲法九条で「戦争の放棄、戦力の不保持」を明記したにもかかわら ず、米国の対日政策の変更によって自衛隊が創設されました。国民の反対の声が巻き起こり、それをかわすため、最初の防衛大綱(一九七六年)では「限定的小 規模侵攻に独力対処できる防衛力」としました。これは「専守防衛」だから「憲法九条に違反しない」と説明しました。その後も、この考え方を踏襲してきたの です。しかし、今回の新大綱ではがらりと変えました。

狙いは中国

 もう一つの重大問題は、中国の海洋進出を意識して、南西諸島へのシフトを打ち出したことです。
 「中国が軍事費を増やし、核・ミサイル戦力など軍事力の近代化をすすめ、周辺海域で活動を活発化させている」と警戒感を顕わにしています。それに対応し て、「日本、韓国、オーストラリア等の同盟国との協力を一層重視する」という米国の軍事政策に呼応しています。
 具体的には、東京・グアム・台湾を結ぶ三角形の海域を頭文字から「TGT三角海域」と名づけ、そこに艦艇や航空機に潜水艦も投入し、中国の潜水艦を常時監視する体制を確立するというものです。
 そのために潜水艦五隻と新型のP1哨戒機一〇機を追加装備(購入)するという軍備増強も組み込まれています。

米国の考えのまま

 「動的防衛力」のもとになった「動的抑止力」という用語・考え方が米国の軍事 文書にあります。昨年二月に米国防総省が出した二〇年先を視野に入れた中長期的戦略文書の中です。民主党政権は、文句を「動的防衛力」に変更し、考え方を そのまま受け入れて、「日本版」として取りこみました。歴代の自民党政権の政策と変わらないどころか、米軍と同調するという点でより危険といえます。
 英国のフィナンシャル・タイムズ紙(昨年一二月)は新大綱について「これで日本は専守防衛のレベルを超える可能性があり、アジア地域で議論を呼ぶだろ う」と指摘しています。実際に中国をはじめアジア諸国から懸念の声があがっています。
 「専守防衛」を捨て、海外展開を強化していく日本の存在の方が、むしろアジア地域にとって「不安定要因」という指摘もあります。日本には、過去の侵略戦 争の教訓・反省に立って、憲法九条を掲げて、軍事力や威嚇によらない外交をすすめることが世界平和への道です。
 学習会では「私たちは、新防衛大綱の危険性を見抜き、その進行を許さない世論をつくろう」との呼びかけが行われました。

(民医連新聞 第1494号 2011年2月21日)