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民医連新聞

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水俣病 シンポジウム 被害地全住民の健康調査を 医師、大学教授らが必要性を強調

 一月一五日、水俣病の健康調査の必要性を問うシンポジウムが東京で行われ、一三〇人が参加しました。主催はノーモア・ミナマタ被 害者・弁護団連絡会議と同全国支援連絡会議。一九五六年に公式確認された水俣病の被害者がいまだに潜在する現状を共有し、全員救済の実現に近づこう、とい うもの。行政がこれまで一度もとりくんでいない被害地域の全住民の健康調査を強く求めました。

 二〇〇九年の水俣大検診と、それに続いて各地でとりくまれている「掘り起こし検診」で、病名診断さえされていない隠れた水俣病患者が、各地に多数いることが明らかになりました。
 しかし政府が被害者救済策として打ち出した特措法は問題だらけ。居住地域や年齢で制限され、救済からもれる被害者が多数いること、原因企業・チッソの分 社化を承認したため、被害者や汚染された地域の補償に関する企業責任がうやむやにされかねません。
 集会では基調報告として、熊本、新潟、首都圏の医師四人が、被害者救済や検診を通じてつかんだ被害をのべました(別項)。熊本からは〇九年に一〇〇〇人が受診した水俣大検診の結果と、一九六八年以降の出生者にも患者がいることが報告されました。首都圏で行われた三度の掘り起こし検診(約一五〇人が受診)結果、新潟水俣病の現状も報告がありました。
 後半のシンポジウムでは、この報告者たちが「問題解決に向けて医学や社会ができること」をテーマに話し合いました。

法の観点から講演が

 また研究者二人が講演。岡山大学大学院の津田敏秀教授は、「水俣病は食中毒事 件。健康調査は食品衛生法に義務づけられている。行政が当初から法にのっとり対応していれば、ここまで被害は拡大しなかったはず」と指摘、食品衛生法の観 点から、健康調査を求めることを提案しました。
 またチッソ分社化問題で、東京経済大学の除本理史教授が報告。「特措法は潜在患者への補償などは義務づけていない。株式売却後も補償責任を遂げさせるた めに、安易な売却を許さない世論が必要」とのべました。

パネリスト4人の発言(要旨)

■高岡滋医師(熊本・神経内科リハ協立クリニック)…二 〇〇九年の大検診では、救済対象外の地域の住民にも水俣病の所見があり、汚染地域や被害の拡大を示す結果だった。未受診だった人の多くが、情報不足を訴え ている。行政は住民に水俣病についての周知や汚染地域の情報提供をすべきだったし被害把握のための実態調査を行うべき。

■藤野糺医師(熊本・水俣協立病院)…救 済対象の年齢が、新保険手帳・治療研究手帳では一九六八年までの出生、特措法対象は「一九六九年一一月までの出生者」とされている。しかし、それ以降に出 生し救済から外れる一一七人の検診で水俣病特有の神経所見があった。最年少で二〇代。救済対象を年齢で線引きすることに医学的根拠はない。

■戸倉直実医師(東京・東葛病院)…水 俣大検診への参加がきっかけで首都圏でも集団検診を三回実施。受診者一四三人全員に不知火沿岸住民と同様の所見があった。うち約九割が初受診。家族や知人 にすすめられるまで自身が水俣病と考えていなかった。二〇〇〇年以降に症状が出たケースもある。市民と共同でとりくむ課題だと考える。

■関川智子医師(新潟・沼垂診療所)…新 潟では阿賀野川がメチル水銀で汚染され流域に水俣病が発生している。被害の認定を求める訴訟もたたかっているが、二〇一〇年に実施した検診でも不知火地域 と酷似した症状がみられた。同時にとりくんだ電話相談では約七割が初めての相談者だった。水俣病の情報の徹底と早期の広範な住民検診が必要。

(民医連新聞 第1493号 2011年2月7日)