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民医連新聞

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相談室日誌 連載319 非正規労働者が病気になると… 井元麻里子(大分)

Aさん、六〇代男性。非正規雇用です。昨年一二月に高熱で入院し、I型糖尿病と診断され、それをきっかけに解雇されました。家族は心臓病の妻と大学生の 一人娘で、Aさんの収入が生活の糧でした。インシュリン注射を始めたAさんは、やっと状態が安定し退院したら初期の胃がんが見つかり再入院しました。栄養 失調もあり、胃ろうを造設。たび重なる病気にうつ状態になりました。環境を変えようと回復期リハ病棟に移った昨年七月から、私がかかわるようになりまし た。
 私があいさつに行くと、うつむいたまま、なかなか話しません。重い口から出た言葉は、「お金が心配…。仕事ができなくなったけんな。生活保護でも受けな いと仕方がない…」。妻に話を聞くと、入院費はどうにか支払い、なんとか生活していたが、今後の生活費をどうしようか悩んでいたとのこと。
 本人と、妻、娘と生活保護の申請を検討し、生命保険の給付がある間は、利用できる制度を探ることに。国民健康保険料の減免申請は、前年度との比較資料が 必要で、それを待って申請しましたが、分割支払いを要求され、少しずつ支払うことにしました。国保法四四条の一部負担金減免申請も検討しましたが、生活保 護と同様に資産を調べられる「壁」があり断念。妻の障害年金が受給可能か社会保険事務所に相談。これも支払期間がわずかに足りず断念。妻は「生活がギリギ リで、年金保険料が払えないことがあったけれど、ここにしわ寄せがくるとは…」とがっかり。
 Aさんは退院の準備で「やることが多いわなあ。でも仕方がない」と言いながらも、胃ろうの手技などを覚え、少しずつ自分の病気と向き合っているようでした。
 今は家に帰り、口からの栄養摂取も少しずつ増やしています。安定した収入源がなく、一カ月一万円の治療費と二万円の胃ろう栄養剤の負担が重くのしかかっています。
 非正規雇用では、高い税金(国民健康保険料、所得税、市民税)を納めていたとしても、いざ病気になって仕事ができなくなった時に、利用できる経済的支援 はありません。病気になったとたん、今までの生活が崩れてしまいます。安心して治療できるセーフティーネットの充実を願ってやみません。

(民医連新聞 第1492号 2011年1月24日)

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