きらり看護・ほっと介護 若い網膜症の患者へ救急看護師が初の在宅支援 鹿児島生協病院/川崎麻衣子(看護師)
救急外来の看護師には受け持ちの患者はなく、患者とかかわれる時間もわずかです。今回、何度も救急搬送され入退院をくり返す患者が気になり家を訪問しました。
アスカさん(仮名)は三〇代、重度の糖尿病(I型)で網膜症も合併しています。高校時代に診断され、二〇代でインスリン自己注射を開始。就職後も不規則 ながら注射は続けましたが、三〇歳になって治療を中断しました。
アスカさんは「母は食事に気を配ってくれたが、私は好き嫌いが多く、野菜やご飯よりジュースや菓子パンばかり食べていた」と話します。父親は他界し、母 親は入院中です。二〇〇八年に一年間入院。退院後は視力低下を抱えて一人暮らし。訪問看護と訪問介護が各週三回入っています。
行ってみると、身体の保清が不十分でした。よく見えないためか「一人で入浴するのは恐い」と話しました。そこで電子レンジで蒸しタオルを作り、身体を拭 くよう提案してみました。しかしアスカさんにはレンジのボタンが見えません。ボタンにビニールテープを貼り、触れて確認するようにしました。レンジが扱え るようになると、蒸しタオルだけでなく、牛乳の温めなど自分でできることも増えました。
大事な緊急連絡先もよく見えていませんでした。そこで段ボールで数字を作り、患者の兄、ヘルパー、病院の電話番号を黄色と黒で塗り分けました。アスカさ んは目を近づけ、指でなぞって番号を認識できるようになりました。
救急外来で働く私には、初めての生活援助でした。ある物で工夫することも大切とわかりました。
(民医連新聞 第1491号 2011年1月3日)