きらり看護・ほっと介護 最東端の医療過疎地で“家で最期まで支えたい” 北海道・訪問看護ステーションエトピリカ 小田智恵(看護師)
第一〇回看護介護活動研究交流集会(二〇一〇年一〇月)には、心温まるドラマが多数、報告されました。その一部を紹介します。
北海道最東端の根室市で、市内で唯一の訪問看護ステーションとして奮闘しています。本市は二〇〇六年に療養型病院が閉院、〇七年には市立総合病院が深刻な医師不足に陥り、夜間・休日の救急搬送以外の対応を休止するなど医療崩壊が深刻化しています。
私たちのステーションは、こうした状況の中でも、「最期まで家にいたい」という利用者の思いに寄り添う訪問看護を実践してきました。ところが、医療過疎 地ならではの問題が生じています。医師不足で二四時間の訪問診療体制がないため、患者さんの死亡確認を救急車で病院に運んですることになります。これで は、患者さんやご家族が本来求める在宅看取りとはいえません。また、救急隊としても消防法との関係で問題です。
利用者の中に、がん末期の八〇代の女性がいました。夫がたくさんの管につながれて病院で亡くなったのを見て「自分は自宅で最期を迎えたい」と希望しまし た。私たちはケアマネジャーや主治医とカンファレンスを開き、在宅看取りの方針を確認し、ケアをしました。女性は次女に見守られ自宅で安らかに息を引き取 りました。
ところが、訪問看護師が救急隊を要請したところ、「心肺停止状態であれば搬送できない」との返答。主治医に連絡し、病院からあらためて救急隊に連絡が 入って搬送可能になりました。救急隊には事前に情報提供はしていても、こうした対応があるのが現実です。
そこで私たちは「死亡確認のための搬送」という実態を市に問題提起しました。市はこれを受け、保健所や消防本部、医療機関、訪問看護ステーションなどで 構成する「根室市地域ケア会議」で、「在宅看取りにおける尊厳の保持」をテーマに話し合いをもちました。さらに根室地域の医療の現状と課題について、一般 市民向けのフォーラムも開催されました。
その後、市立病院と当ステーション間で懇談を繰り返し連携を取る中で、自宅に医師が訪問して死亡確認を行う体制を整えつつあります。また、ステーション と救急隊との連携も深まり、看取りに限らず、急変しやすいケースについては事前にサマリーで情報を流すことになりました。私たちの実践が大きく地域を動か したといえます。これからも利用者の願いに寄り添い諦めない看護を実践していくと同時に、根室市の医療体制づくりに積極的に参加していきたいと思います。
(民医連新聞 第1491号 2011年1月3日)
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