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民医連新聞

民医連新聞

日韓の医療者「手をつなごう」 歴史に学び、健康な社会へ 韓国ピープルサミット 全日本民医連が招かれ講演 医師・歯科医師と意見交換

このほど行われた二つの韓国訪問を紹介します。

 韓国の進歩的な医療従事者の組織「健康権実践のための保健医療団体連合」(保健医連合)の招きで、一一月五~七日、全日本民医連の山田智副会長(医師)、江原雅博理事(歯科医師)、大河原貞人事務局次長が訪韓。日本の医療事情について講演し、討論会などに参加しました。

5万人の爆発的なエネルギー

大河原貞人(事務局次長)

 招待は、G20ソウル・サミット(一一~一二日)に抗議し、韓国の労働組合や進歩的市民団 体が開催した「ピープルサミット」に合わせたもの。一一月七日に五万人で開かれ、「世界銀行や国際通貨基金(IMF)などが各国に『財政健全化』や『民間 活力の導入』を押しつけ、教育や保健などにダメージを与え、貧困を深刻化させている。食料や燃料の高騰、飢餓人口一〇億人以上という事態にG20の責任は 重い」と声を上げました。
 招待された討論会のテーマも「日韓両国の医療制度民営化に反対する共同闘争について」でした。講演後の三日目には五万人集会に参加し、装甲車と機動隊に 囲まれながら歓声と拳をあげる市民の爆発的なエネルギーの中で、「医療民営化反対」「医療をすべて保障せよ」などの署名行動に参加しました。

民営化に抵抗…日韓の共通課題

山田智(副会長・医師)

 一日目の夜は前夜祭で「保健医連合」の医師たち十数人と韓国料理を囲んで懇親会。中はに今年八月の原水禁世界大会で知り合った医師もいて、再会を喜び合いました。
 翌日の午後、ソウル大学医学部の教室で講演しました。参加者は医師や看護師、学生など約四〇人です。写真を中心に四二枚のパワーポイントを二五分で説明 し、通訳が二五分。民医連の歴史と活動、新自由主義政策下の一〇年で、医療制度と介護保険制度がどう改悪されたか、医療関係者と国民の共同行動の現状など を話しました。
 その後は一時間におよぶ質問と討論でした。「日本の医師は医療民営化についてどんなスタンスなのか」「特定健診・保健指導を韓国も導入しようとしている が、日本ではうまく機能しているか」「韓国でも介護保険が導入されて一年。日本の事情を知りたい」「貧困層は生活保護で保障されていると聞くが、なぜ民医 連が無料低額診療にとりくむのか」などの質問が出され、三人で答えました。制度の改悪や民営化など、日韓両国に共通する問題が浮き彫りになり、今後は情報 の共有と交流をすすめることを確認しました。

韓国の医師らの姿勢に感銘

江原雅博(理事・歯科医師)

 私の講演会は「健康な社会のための歯科医会(健歯)」の地域役員・リーダーが対象で、青年・中堅歯科医約六〇人が参加しました。会場は韓国の中央にあるテジョン市でした。
 「健歯」は保健医連合の加盟団体では最大で一四〇〇人の会員がいます。講演では、日本の歯科医療と民医連歯科の特徴、貧困のため歯科に受診できない国民 の実態、「保険でよい入れ歯」の運動、高齢者の入れ歯について話しました。
 質問は「国民皆保険や生活保護制度があるのになぜ受診できないのか」「日本の歯科の民間保険の活用について」「保険で良い歯科医療の運動について日本の 開業医の意識は?」「保険と自費の棲み分けは?」「困難な入れ歯の症例での大学との連携は?」など多く出され定刻を超過。その後、役員らと懇談しました。
 韓国は国民健康保険一本の皆保険制ですが、歯科の保険診療は四割弱。自由診療が日常的で、日本より大変な状況ですが一つひとつ保険給付を広げています。 参加した医師たちの真剣さと学ぼうという真摯な姿勢、エネルギーに涙が出るほどでした。日韓で互いの運動を学び、手を携えていくことが大切と感じました。

(民医連新聞 第1490号 2010年12月20日)