福岡で水俣病検診 特措法のしめきり懸念
「水 俣病検診 ふくおか」(主催・福岡県民医連などでつくる実行委員会)が一〇月二四日、親仁会・千代診療所で行われ、市内および福岡、長崎、大分、広島の四 県から、不知火海沿岸に居住歴をもつ四〇人が相談に訪れ、県連の医師八人をはじめ看護師、SWなど五三人が対応にあたりました。熊本民医連から医師二人を 含む六人が応援に来ました。(武井賢司・福岡民医連事務局)
福岡での検診・相談会は二〇年ぶり。八日に福岡県庁で記者会見を行い、県内には不知火海沿岸出身者が在住している事情を伝え、周知を呼びかけました。
新聞四紙が紹介記事を掲載、三紙に有料の広告・チラシを入れ、直後に問い合わせが集中しました。
福岡県や市町村にも広報を要請しました。チラシ配布やポスター掲示を了解する市町村があった一方、県は「水俣病は当県に関係ない」「特定団体の催しは協力できない」という態度。
福岡県漁協連合会やありあけ漁協連合会、保険医協会、地元患者会がチラシ配布に協力してくれました。検診は受診者が事前に記入した問診表をもとにすす め、検査の結果、三三人に診断書が発行されました。相談は「水俣病特措法の一時金を申請できないか」などでした。後日「参加できなかった。次はいつか」な どの電話が多く寄せられています。
水俣病と気づかず
芦北町出身の男性(六一)は「家業は農業だが当時、山間部に売りに来た魚を毎日食べていた。四〇代で足のしびれなどの症状が出たが、加齢からくる病気と考えていた。この相談会は新聞で知った」と話しました。
来場者に、これまで申請しなかった理由を聞くと、「世間体や差別を恐れた」「仕事に影響するから」「父がチッソ勤務だった」などでした。
情報不足もあり、「年齢的に対象外だと思っていた」という人(43)もいました。症状があっても水俣病とは考えなかったという人も目立ちました。
国・行政の責任で
田中辰憲さん(健和会)は「相談にきた人の年齢層の広さと、水俣市に住んでいないのに症状が出る人が多いのに驚いた。国は一人でも多く救済すべき。今回、検診活動を体験できてよかった」と語りました。
水俣・協立クリニック事務長の池田龍己さんは、「水俣病について情報が伝わっていない。特措法により七月末で今までの保健手帳が使えなくなったが、更新手続きをしていない人が多い」と語りました。
相談会を通じて、検診活動の重要性と潜在的な水俣病患者の掘り起こしと救済に国と行政が責任をもつ必要があらためて明らかになりました。このままでは救 済を受けずに亡くなる人や特措法の締め切りに間に合わない人も懸念されます。
偏見や差別を解消する世論づくり、日常診療での問診の強化と救済申請の支援が課題です。まとめの中で、田村昭彦実行委員長(医師)は、生活歴・職歴・居住歴を正しくつかむ問診の重要性を訴えました。
(民医連新聞 第1488号 2010年11月15日)